世界のEC市場規模と主要5か国のEC市場を解説

世界各国でインターネットの普及が進んだことと、昨今のコロナ禍の影響もあり、世界のEC市場規模は急速な拡大傾向にあります。

経済産業省が2022年8月に発表したレポートによると、2021年の世界のEC市場規模は日本円にして約536兆2800億円で、今後も堅調に推移していくことが予測されており、世界的にECの重要性が高まってきております。

参考:令和3年度 電子商取引に関する市場調査報告書(経済産業省)

世界中で急速に生活のデジタル化が進んだことと、コロナ禍で以前のように海外渡航ができなくなったことから越境ECの利用も促進され、現在ではさまざまなプラットフォームで越境ECへの参入も容易になりました。

日本のEC市場はまだまだ小さく、今後EC事業を大きく展開していくのであれば、世界に目を向け、他国の状況や市場のトレンドをしっかり把握しておくことも重要になります。

本日は、forUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、世界のEC市場規模の現状について解説します。

世界のBtoC-EC市場の現状

まずは世界のBtoCにおけるEC市場の現状を解説します。なお、以下に記載するグラフは経済産業省の調査結果より引用しております。

引用:令和3年度 電子商取引に関する市場調査報告書(経済産業省)

市場規模について

下のグラフは、世界のBtoC-EC市場における、予測値も含めた市場規模の推移です。

◆世界のBtoC-EC市場規模(単位:兆USドル)

世界のEC市場規模

2021年の世界のEC市場規模は、4.92兆USドル(約536兆2,800億円※1)でEC化率は19.6%でした(※2)。今後も右肩上がりに伸長し、2025年にはEC化率が24.5%に達するものと予測されております。

※1 2021年の年間平均レート109円換算
※2 調査結果に旅行やイベントのチケット、料金支払い関連、税金、送金、フードサービス、ギャンブル等は含まない

昨今の新型コロナウイルスの影響で外出自粛からロックダウンまで程度の差はありますが、世界各国で人々の生活が一変し、巣ごもり需要が拡大したことによりEC市場が大きく伸びました。

今までECを利用したことがなかった層もECを利用し始めたことは大きく、各国とも物流やインフラの整備、EC化が進んでいない分野の見直しなど、EC事業に本腰を入れて取り組んでいくと見られ、今後も市場は堅調に推移していくことが予測されます。

それでは次に、各国のEC市場規模について見てみましょう。

国別市場シェアについて

次に全世界における各国のBtoC-EC市場が占める割合について、下の円グラフをご覧ください。

◆国別EC市場シェア(2021年)

国別のEC市場シェア

このグラフを見ても一目瞭然ですが、中国のEC市場規模が52.1%とダントツで大きく、1つの国だけで世界の半分以上のシェアを占めております。次いでアメリカが19%なので、2か国だけで世界の7割以上のシェアとなっております。第3位のイギリスでもたった4.8%と、中国とアメリカが他国を大きく引き離す形になっており、当面の間この構図は変わらないものと筆者は考えます。

越境EC市場について

世界の越境EC市場についても大きな拡大予測が立てられております。以下をご覧ください。

◆世界の越境EC市場規模の拡大予測

今後も堅調に推移していくことが予測されております。

世界の越境EC市場はここ数年で一気に規模を拡大し、年間平均成長率約30%の勢いで、2026年には4兆8,200億USドルにまで拡大することが予測されております。

経済産業省のレポートによると、このような大幅な市場拡大が予測される背景には、越境ECの認知度の上昇、自国にはない商品への取得欲求、自国よりも安価に入手できるものがあること、商品やメーカーに対する信頼性などがあげられています。また、物流レベルの向上も越境ECを促進しているものと考えられています。

ここまで世界のEC市場規模の全体像について解説しました。先に述べた通り、国別の市場シェアは中国とアメリカが大部分を占めておりますが、これはあくまで人口の違いによる部分が大きく、市場シェアが小さいからといって、その国のEC化率の大小に直結するものではありません。以降に、各国のEC市場の概況について解説します。

主要5か国のBtoC-EC市場の概況

ここからは日本以外の5か国について、昨今のEC市場の状況を解説します。

①中国

世界のEC市場でトップシェアを誇る中国の2021年のEC市場規模は、経済産業省の発表によると、2兆4,866億USドル(約271兆円※)で、2025年には3兆6,159億USドルに達すると想定されております。また、EC化率は2020年時点で44.0%となっており、同年の世界市場のEC化率17.8%に対して2倍をゆうに超え、極めてECが盛んな国であることが分かります。

※ 2021年の年間平均レート109円換算

◆中国におけるEC市場規模(単位:億USドル)

出典:令和3年度 電子商取引に関する市場調査報告書(経済産業省)

中国のEC市場がこれほどの成長を遂げた要因としては、急激なキャッシュレス化によるものが大きいでしょう。近年、一気にモバイル端末の普及が進み、今や中国国内のインターネット人口は10億を超えたと報告されています。

モバイル端末の普及に比例してデジタルペイメントの利用が進み、今や中国の消費生活にとってモバイル決済はなくてはならないものとなっており、このことがEC化率に大きく影響しているのです。

参考:ネット人口10.51億人、普及率74.4%に(アジア経済ニュース)

また、中国には毎年「独身の日」と呼ばれる日があり、この日には極めて大規模なオンラインセールが開催され、中国国内のEC市場は毎年爆発的な売上を記録しております。

もともとこのイベントは、中国の最大手EC企業であるアリババグループが2009年に開催したイベントがきっかけでしたが、今や国内の各大手ECサイトのみならず百貨店、スーパーをも巻き込んで、中国全土に拡がる一大商戦のイベントに成長しました。2018年には、たった1日で、日本円にして3.6兆円を超える売上を記録しました。

この「独身の日」も、間違いなく中国のEC市場を世界トップに成長させた要因の一つと言えます。

参考:【2018年「独身の日」まとめ】35秒で約17億円を売ったユニクロなど、天猫(Tmall)で売れた日本商品はこれ!(ネットショップ担当者フォーラム)

今後しばらくは、中国が世界のEC市場の先頭を独走する状態が続くでしょう。これから中国EC市場がどのような成長を見せていくのか、世界の注目が集まります。

②アメリカ

世界市場で中国に次ぐシェアを占めるアメリカにおける2021年のEC市場規模は、およそ8,707億USドル(約94.9兆円※)で、EC化率は13.2%と推計されております。新型コロナウイルス感染拡大の影響によりEC利用が急増し、前年比14.6%増の市場規模となりました。

※ 2021年の年間平均レート109円換算

国全体の市場規模においては中国に及ばないものの、AmazonをはじめさまざまなIT企業・EC企業が世界のEC市場で大きな存在感を持っております。以下は、2021年のアメリカEC市場におけるECサイトのシェアランキングです。やはりAmazonが飛び抜けて大きなシェアを持っております。

◆アメリカEC市場における事業者シェアトップ10(2021年)

1位:サードパーティー事業者(23.3%)
2位:Amazon(17.4%)
3位:Walmart(6.5%)
4位:Apple(5.3%)
5位:eBay(4.5%)
6位:Target(2.3%)
7位:Best Buy(2.2%)
8位:Home Depot(2.1%)
9位:Kroger(2.0%)
10位:Wayfair(1.5%)

※ サードパーティー事業者:Amazon、eBay、Walmartなどのオンラインマーケットプレイスに出品して販売する事業者

出典:令和3年度 電子商取引に関する市場調査報告書(経済産業省)

商材別にEC市場を見ると、「衣類・雑貨」、また「家具、建材、電子機器」の市場規模が大きく、特に「家具、建材、電子機器」はEC化率13.4%と他商材に比べて高く、コロナ禍のロックダウンによる自宅滞在時間の増加の影響が大きいものと予想されます。

◆米国における商材別EC市場規模(2021年)

出典:令和3年度 電子商取引に関する市場調査報告書(経済産業省)

さらに注目したいのは、コロナ禍以降の食品EC市場の成長です。以下は、アメリカの食料品・飲料のEC市場規模推移のグラフです。

◆食料品・飲料のEC市場(2018年〜2020年)(単位:十億USドル)

出典:令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)報告書(経済産業省)

2020年、アメリカの食品EC市場は大きく成長し、市場規模は245億USドル(約2兆5,970億円※)と推計されています。新型コロナウイルスが拡大した2020年の第2四半期には、売上高は前年比 221.4%を記録しました。

※ 2020年の年間平均レート106円換算

これまでアメリカEC市場における食品の市場規模はそれほど大きくありませんでしたが、コロナ禍の影響によりEC化率が大きく伸長し、それに伴い、オンラインで注文した商品を店舗で受け取る「ピックアップ・インストア」といったサービスや、ブルーエプロンなどの宅配料理キットサービス、またUber Eatsなどのデリバリーサービスといったさまざまなサービス形態が立ち上がり、食品ECの成長を後押ししました。

アメリカも日本同様に、消費者は食品ECの利用に消極的でしたが、コロナ禍をきっかけに今後はこの分野でのEC利用も進んでいくことになり、小売全体のEC市場に少なからず影響を与えるはずです。

③イギリス

イギリスの2021年のEC市場規模は、2,346億USドル(約25兆5,714億円※)です。イギリスはインターネット利用率が97%と極めて高く、国別市場シェアこそ4.8%ですが、EC化率は36.3%とEC利用が進んでいる国です。6,680万人という日本の約半数の人口にもかかわらず、中国、アメリカに次ぐ世界3位の市場規模を持っているのは、このEC化率の高さに他なりません。

※ 2021年の年間平均レート109円換算

引用:Ecommerce in The United Kingdom海外市場の成長がECの積極的活用を後押し(世界、日本)(日本貿易振興機構)

もともとヨーロッパ諸国は、早くからインターネットの普及が進んでおります。下表は、国連が発表したインターネット利用率などを総合した各国ランキング(2019年)ですが、上位10か国のうち8か国をヨーロッパの国が占めております

ネット環境各国ランキング

引用:UNCTAD B2C E-COMMERCE INDEX 2019

中でもイギリスがこのようにEC利用が盛んな要因としては、以下3点が考えられます。

① モバイル端末の普及が早かった
② キャッシュレス決済の普及
③ 英語圏のため越境ECの利用が盛ん

特にモバイル端末に関しては、2005年あたりで既に普及率が100%を超えるほどに普及が早く、ECのスマートフォンやタブレットへの対応も進んでおり、イギリスの小売店上位50店への調査結果として、以下の分析結果が出ております。

・60%は「モバイル向けの店舗案内システム」を持っています
・80%は「購入可能なモバイルサイト」があります
・70%は「IOSに対応したアプリ」を持っています
・72%は「アンドロイドに対応したアプリ」を持っています
・56%は「タブレットに最適化されたサイト」を持っています
・54%は「レスポンシブウェブデザイン」に対応しています
引用:ヨーロッパで最もEC利用率が高い、イギリスのEC事情&事例紹介

また大手のECサイトでは、店頭受け取りや店内のタブレットから商品を選択できるなど、リアル店舗とECを連携させるオムニチャネル施策にも取り組んでおります。

このように、モバイル先進国としてEC利用が進んでいるイギリスですが、各国同様に新型コロナウイルスの感染拡大により、さらに消費者のEC利用に拍車がかかり、2020年には65歳以降のインターネットユーザーが37%も増加したというデータもあります。高齢者の利用促進によるEC化率の伸長は、「成長」というより「変化」と言えるでしょう。

④韓国

韓国EC市場は、世界でのシェアこそ日本に次いで5位ですが、EC化率は高く、日本貿易振興機構(ジェトロ)のレポートによると、中国、英国に次いで29%(2021年)という高いEC化率を誇ります。経済産業省の調査によると2019年のEC市場規模はおよそ871億USドルでしたが、2020年はおよそ1,106億USドル(約11兆7,236億円※)と、一年で大きく拡大しました。

参考:海外市場の成長がECの積極的活用を後押し(世界、日本)(日本貿易振興機構)

※ 2020年の年間平均レート106円換算

韓国の2022年1月時点の総人口5,132万人に対するインターネットユーザー数は5,029万人と、インターネットの普及率が98%に達しております。また、1997年のアジア通貨危機以降に韓国政府が打ち出した景気対策としてクレジットカードの普及を推進したことで、キャッシュレス化が一気に進み、それに伴ってオンライン決済システムも大きく発達しました。

こういった背景が、韓国におけるEC化率の高さの要因と考えられます。

引用:DIGITAL 2022: SOUTH KOREA

韓国では以下の主要4サイトのシェアが大きく、国内のEC市場をけん引してきております。

これらのサイトはいずれもショッピングモール型のECサイトですが、韓国では個人で経営しているジャンル特化型のECサイトも非常に多く存在しており、大別してこの2種類のECで市場が形成されております。

特に、特化型のECサイトはファッション関連が多く、消費者のニーズに合わせて「トレンド古着専門」「高級子供服専門」「40代男性向けフォーマルウェア専門」など、非常に細分化されております。韓国では、モールに出店するには国内に店舗や工場を持っていないといけないなど出店条件が厳しいため、このような個人のECサイトが多く存在しているものと推察されます。

韓国では、主流となる検索エンジンは「NAVER」、コミュニケーションツールは「カカオトーク」です。このように独自のインターネット文化を持つ韓国のEC市場が、今後どのような発展を遂げていくのか楽しみです。

⑤ドイツ

2021年のドイツのEC市場規模は991億ユーロ(約12.94兆円)で、これは前年から19%の成長率となりました。以下の記事によると、ドイツの消費者が家計のおよそ7分の1をECに費やしている計算になります。

参考:2021: Ecommerce in Germany worth €99 billion

ドイツはヨーロッパ最大の経済大国ですが、ECに関してはイギリスとの差は大きく、市場の伸び率は未だ低いのが現状です。ドイツでは、オンラインでの決済方法は請求書による後払いがメインとなっており、実店舗においても現金が中心となっているため、このキャッシュレス化が進んでいない現状が、EC市場がいまひとつ伸び悩んでいる要因の一つと考えられるでしょう。

またイギリスと比較したときに母国語がドイツ語ということも、イギリスとの差がついている要因になっていると思われます。

参考:Ecommerce in Germany

ドイツ市場で高いシェアを持つEC事業者は以下の5社になります。

Amazon
Otto(ファッション通販)
Zalando(ファッション通販)
Media Markt(家電量販チェーン)
Notebooksbilliger(オンライン家電小売)

この5社の収益が上位100社の収益の47%を占めており、ひいてはEC市場のほぼ半分を占めていると言える状況となっております。このように集中化した市場では新規参入は難しく、ドイツのEC市場の活性化に歯止めがかかってしまっているのかもしれません。

なお、上記5社のカテゴリを見ても分かる通り、ドイツのECにおいて人気の製品カテゴリは、ファッションを筆頭に家電製品やコンピューター、書籍や音楽およびゲームなどのメディア製品と続きます。

参考:ドイツeコマース上位5社、上位100社の収益の47%を占める

ここまでドイツEC市場のネガティブな現状を解説してまいりました。しかし冒頭で触れたように、コロナ禍を経て、ドイツEC市場にも大きな成長の兆しが見えてきました。特に昨今では食品ECが活発化してきており、Uber EatsやWoltなどのフードデリバリー各社がドイツ市場に参入し、ネットスーパー事業を展開する動きを見せております。

これまでネットスーパーが普及してこなかったドイツでは、今後の食品ECの伸長を足がかりに、EC市場の拡大が期待されます。

参考:ウーバーイーツにウォルト、ドイツでネットスーパーとフードデリバリーが融合する事情

今後は世界のEC市場も競争激化!

コロナ禍をきっかけに、EC分野の成長に伸び悩んでいた国も、市場規模を大きく成長させました。人々のライフスタイルが大きく変化し、これまでECを利用してこなかったユーザーもECを利用するようになり、急速に生活のデジタル化が進んでおります

海外旅行も気軽にできなくなってしまった状況で、越境ECも認知され、今後は各国とも積極的に越境EC構築に乗り出し、国外に販路を作っていくことになるはずです。今後は、各国で越境ECやDXの取り組みが積極的に行われ、世界のEC市場の競争は激化すると考えられます。

当面は中国とアメリカのトップ2か国の立ち位置は変わらないことが予想されているものの、日本を含めた3位以降の各国で、目まぐるしい順位変動があるのではないでしょうか。これから日本でEC事業に取り組むのであれば、世界市場に目を向け、他国の状況や市場のトレンドをしっかり把握しておくことが重要になってきます。

もし、これからEC事業に取り組むのであれば、ECサイトの構築には、インターファクトリーのebisumart zero(エビスマート ゼロ)をぜひご検討ください。とくに新規事業者におススメで、ECで売上を伸ばすための機能が実装されており、多くのツールと連携することも可能です。詳細については、下記の公式サイトをご覧ください。

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