大手事業者が、これから新規事業でECサイトを立ち上げる際に、パッケージの利用を検討しているのではないでしょうか?
パッケージは「カスタマイズ」と「システム連携」を前提としたシステムであり、年商が1億円を超える規模のECサイトに向いておりますが、ASP-ECやクラウドECと違い、5年ほどたつとシステムが陳腐化するデメリットがあります。
本日は、forUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、ECサイト構築におけるパッケージについて詳しく解説します。
ASP-ECを比較すると「システム連携」や「カスタマイズ」する場合は、パッケージ!
まず、パッケージをASP-ECと比較してみましたので、以下の表をご覧ください。
パッケージ | ASP-EC | |
---|---|---|
初期費用 | 数百万円~ | 数万円~ |
月額費用 | 10万円~ | 数千円~ |
導入期間 | 半年~ | 1か月~ |
ECのフロント機能 | 〇 | 〇 |
システム連携 | 〇 | × |
独自カスタマイズ | 〇 | × |
システム最新性 | △ | 〇 |
この表を見ると、費用感は高くなりますが、システム連携や独自のカスタマイズを行いたい場合は、パッケージの方が適しています。しかし、ASP-ECと違い、パッケージECは導入期間がかかります。
新規事業というのは「スピード」が求められることが多く、新規にECサイトを構築する場合は、パッケージではすぐにリリースというわけにはいきません。しかし、ASP-ECなら1か月程度で準備することができます。
そのため、パッケージを利用する場合は、新規事業のECサイトよりも、すでにECサイトとして成功しているシステムをリニューアルする方が向いていると言えます。新規事業においては、すぐにECサイトを立ち上げてテストマーケティングが実施できるASP-ECの方がメリットがあります。
パッケージを新規事業に使う利点は「カスタマイズ」や「システム連携」を実施しない場合
導入期間がかかるパッケージでも、3か月程度でリリースできるケースがあります。それは、カスタマイズやシステム連携を全く行わずに、パッケージの基本機能だけでECサイトをリリースする方法です。
パッケージの基本機能とオプション機能だけを利用するのであれば、ECサイトをリリースするための工数を一気に短縮することができます。この方法にはメリットがあります。それは将来のシステム連携をスムーズに実施することができる点です。
ASP-ECを使って新規事業を立ち上げ、年商1億円を超えるようになってくると、1日あたりの注文数が100件を超えてバックエンド作業の効率が悪くなるため、システム連携が必要となります。そのため、ASP-ECを使っている場合は、システム連携やカスタマイズが可能なパッケージ等のシステムに乗り換える必要があるのです。
ECサイトのシステムの乗り換えは規模の大きさにかかわらず以下のような作業が発生し、かなりの負荷がかかります。
◆ECサイトの乗り換えの際に行われるデータの引き継ぎや作業
・取引データの引き継ぎ
・顧客データの引き継ぎ
・サーバーの引っ越し
・SEOパワーの引き継ぎ(SEO施策)
・新サイトのデザイン決定
・新サイトの要件定義
このようにECサイトの乗り換えというのは非常に大変なのです。しかし、パッケージを使っていれば、データの引き継ぎは発生せず、そのままシステム連携やカスタマイズができるので、大幅に工数を削減することができるのです。
そのため、大手企業が新規事業でECサイトを立ち上げる場合、カスタマイズなしでパッケージを導入するのも悪くない選択肢です。カスタマイズをしなければ、パッケージベンダーにもよりますが、ECサイトの導入費用は200~600万円程度に抑えることができます。
もし、大手事業者がECサイトを「事業の柱の一つにする」という考えであれば、パッケージを使って、カスタマイズなしで素早くECサイトをリリースして、ECサイトのノウハウを蓄積しながら売上を向上させ、フェーズを分けてカスタマイズやシステム連携を実施するのも良いでしょう。
パッケージのデメリットはシステムが陳腐化すること
パッケージの最大のデメリットは、システムが陳腐化することです。ECサイトに限らず、どんなシステムであっても5年を経過すると時流に乗り遅れたり、最新のセキュリティに対応できていない部分が出てきます。
パッケージベンダーによっては、最新のバージョンのパッケージをインストールして利用できる場合がありますが、カスタマイズを実施していたり、条件によって最新のバージョンが適用できないケースが多々あります。また、ECにおいてはパッケージ自体が「カスタマイズ」や「システム連携」が前提となっており、やはり陳腐化は免れられません。
ASP-ECのシステムであれば、クラウド環境であるためシステムがベンダー側で絶えず更新されており、セキュリティだけでなく最新の機能やオプションが実装され続けるので、システムが陳腐化することはないのです。
ASP-ECも年々機能を拡大!システム連携が可能なものが増えている
ASP-ECのシステムの中にも、API連携を使ってシステム連携が可能なシステムが増えてきております。データベースを大幅に変更するようなシステム連携はできませんが、商品情報や取引情報などをAPIを使って、システム間で利用できるASP-ECがあります。
そのため、ASP-ECを導入した事業者が自社の基幹システムと連携したり、外部ツールとAPI連携するケースが増えてきております。
しかしAPI連携では、複雑な対応であったりECサイトの相手先システムがAPI連携ができなければ、システム連携ができません。
年商規模が1億円以上ならパッケージやフルカスタマイズ可能なクラウドEC
年商が1億円を超えて、さらにEC事業を成長させていくには、バックエンド作業の効率化を検討しなくてはなりません。その際にシステム連携や独自のカスタマイズが得意なパッケージを検討しますが、昨今では各パッケージベンダーよりカスタマイズ可能なクラウドECがサービス提供されるようになりました。
カスタマイズできるクラウドECとは、ASP-ECとパッケージのメリットを兼ね備えたECプラットフォームです。
◆ASPのメリット
・時流にあったシステムを利用できる
◆パッケージのメリット
・システム連携が可能
このメリットを併せ持つのが、フルカスタマイズ可能なクラウドECなのです。パッケージをシステム連携やカスタマイズ前提で導入する場合、導入費用が数千万円~1億円を超えることも珍しいことではありません。
しかし、クラウドECであれば、一度システムを導入すればパッケージのようにシステムが古くならないので、中長期的に見るとECサイトの運用コストを抑えることにつながるのです。
インターファクトリーのebisumart zero(エビスマート ゼロ)もフルカスタマイズ可能なクラウドECであり、ECサイトの導入を検討する場合は、他社とともにご検討ください。
まとめ
システムを導入する際は、中長期的な観点でシステム選定を実施すべきです。機能要件も大切ですが、ASP-ECやパッケージ、クラウドECなどの各システムの特徴を踏まえてシステムの選定を進めましょう。
また、その際は以下のような点も同時に抑えておきましょう。
◆ECサイトのシステム選定で重要な観点
・自社の業界への理解
・ECサイトへの理解
フルスクラッチでECサイトを構築すると、一見すると自社に最も合うECサイトが作られると思ってしまいますが、もし開発を依頼した開発会社にEC業界のノウハウがあまりなければ、ECサイトに必要な機能が備わっていないサイトが出来上がる可能性があります。
その点、ECサイト専門のベンダーであれば問題ありませんので、コンペを行う際は必ずパッケージやクラウドECのベンダーを交えて実施しましょう。