古着を扱う事業者で、ECサイトでの販売を検討している方もいるのではないでしょうか。
基本的な販売方法はアパレルECサイトと同じではありますが、古着という特性上、EC販売にあたっては以下の5点が重要なポイントとなります。
② 検索性を高める
③ 専門性を高める
④ 商品写真の撮り方に注意する
⑤ 問い合わせをしやすい導線を作る
通常の洋服を販売する感覚でECサイトを展開しても、期待したほどの売上があがらない可能性もあるため注意が必要です。
本日は、forUSERS株式会社でマーケティングを行っている筆者が、古着ECについて詳しく解説します。
古着ECサイトで重要な5つのポイント
それでは早速、ECサイトで古着を販売する際に重要となる5つのポイントを一つずつ解説します。
ポイント① 商品数を豊富に掲載する
古着のECサイトでは、掲載されている商品数が豊富であることが重要です。商品数が多いほどサイトとして魅力的に見えるのはもちろんですが、古着好きのユーザーにとっては、「古着を探す(掘る)」という体験が魅力になるからです。
そのため、商品数が豊富なECサイトの場合、定期的に何度も訪れて、宝探し感覚で「掘り出し物」を見つけるという楽しみをユーザーに提供することができます。
特に古着は基本的に一点物ですから、ECサイトにおいて各商品の在庫数は「1」に設定していることが多いはずです。売れるとすぐに「売り切れ」の表示になるため、商品数の少ないECサイトでは、あっという間に商品一覧が売り切れ表示で埋め尽くされてしまうので注意が必要です。
ポイント② 検索性を高める
前項で、商品点数は豊富にすべきと書きましたが、商品点数が多い分、検索性を高めて商品が探しやすいような工夫をしなくてはいけません。いかに商品が豊富にあるといっても、商品が探しづらければ使いにくいサイトとしてユーザーは離れてしまいます。
「トップス」「ボトムス」「アクセサリー」といった大カテゴリから「カットソー」「シャツ」「スウェット」「デニムパンツ」「スラックス」「ベルト」といった小カテゴリまで、できるだけ細分化して検索しやすくします。
また、古着特有の検索条件として、「取り扱いブランド」「年代」「生産国」などがあります。
ポイント③ 専門性を高める
古着は、アパレルの分野でも特に専門的な知識が求められるジャンルです。販売するにあたって必須条件というわけではありませんが、商品知識を持たずに販売することで潜在的な利益を失ってしまう可能性があります。
古着は、さまざまな要素から商品の価値が決まります。以下は価値を決める要素の一例です。
◆古着の価値を決める要素の例
・商品の状態
・タグや製法による年代
・オリジナル品かコピー品か
・コピー品ながら価値のある「ブート品」か
価値決定要素を把握していなかったために適正な価格を設定できなかった場合、結果的に大きく損をする可能性があるため、古着販売で売上を上げるには、このような知識が重要になってくるのです。
もし、専門的な知識のもとに商品を販売できるのであれば、ECサイトには商品ページなどでしっかりとその専門性を反映させましょう。そのような専門性が高いECサイトであれば、ファンも定着しやすいでしょう。
ポイント④ 商品写真の撮り方に注意する
通常のECサイトであれば、商品写真は「いかに商品を魅力的に見せるか」に主眼を置いて写真を撮影しますが、古着ECサイトの写真では、それに加えて「商品の状態」をしっかり見せることが重要です。
店舗において古着を選ぶ際は、デザインやサイズ感に加えて、ダメージや汚れ、型崩れ、退色具合など、商品の状態もしっかりチェックする必要があります。
特に商品を手に取って確認することができないECサイトでは、ユーザーに商品の状態を明確に伝える必要があるため、テキストによる実寸法や状態説明はもちろん、詳細な写真をできるだけ多く掲載することが重要です。
汚れ、ダメージ、欠損などは、返品やクレームにつながる可能性もあるため、特にしっかりと接写写真で明確に提示するようにしましょう。
また、古着において商品価値を判断しやすいタグ類も接写写真で分かりやすく掲載することも大事です。
◆古着の写真のバリエーション
・汚れ、ダメージ、欠損部などの写真
・ブランドタグや品質表示タグ
・着用写真
・その他付属品
ポイント⑤ 問い合わせをしやすい導線を作る
ECサイトで商品の状態や寸法などの説明を丁寧に記載しても、やはり一点物ということもあり、掲載されている情報だけでは不安というユーザーもいるでしょう。
また、特に古着好きのユーザーであれば、部分的な縫製などの細かいところまで確認したいというニーズもあるため、商品ページには「商品についてのお問い合わせはこちら」といった形で、問い合わせへの導線を作ることも重要です。
効果的な集客の方法
それではここで、古着ECサイトにおける集客方法について解説します。
SNSを駆使した集客が効果的
古着ECサイトにおいて効果的な集客方法は、やはりSNSの活用です。2021年頃から2023年現在まで、世間では空前の古着ブームとなっており、40代の古着世代はもちろん、10代や20代の若者世代にも古着が大人気です。
そして、そういった若者の間でのファッション関連の情報収集はInstagramが中心となっております。以下をご覧ください。
◆購入時の検索方法と購入検討における検索方法
引用(グラフ):ネットショップ担当者フォーラム「【Z世代のファッション意識】Instagramは情報収集&検索で1位、通販サイトは検索ツールとしても活用する」(2021年9月15日掲載)
このグラフを見て分かる通り、ファッション関連においては、普段の情報収集にInstagramが最も活用されております。
実は筆者も古着が大好きで、休日には、よく古着屋巡りをしているのですが、実際に情報収集にはInstagramを利用しており、どの店舗も新商品を仕入れ次第、取り急ぎInstagramにアップするといった形で活発に利用してます。
そして、筆者がInstagramと店舗の両方を頻繁にチェックしていると、Instagramに掲載された商品は、比較的早く売れやすいということが分かりました。ユーザーはInstagramで商品をチェックして、気になる商品があれば店舗に足を運んだり、ECサイトで購入していると考えられます。
また、YouTubeやTikTokなどの動画配信サービスも、集客ツールとして大いに活用できるサービスです。動画であれば、商品の状態もユーザーにより伝わりやすいため、積極的に活用していくべきです。
今や、ファッションYouTuberの中でも、古着を取り扱ったり、古着を専門にしているYouTuberも多く存在しており、古着業界の注目の高さがうかがい知れます。
古着専門アプリ「Vintage.City」
「Vintage.City(ヴィンテージシティ)」は2020年12月に誕生した、日本初となる古着に特化したプラットフォームアプリ(Webサイトもあり)です。全国の古着店や古着商品を探したり、直接取引して購入したりすることも可能なアプリで、約800店舗(2023年5月現在)が出店しています。
店舗探しだけでなく、コミュニティや古着情報発信のコンテンツも充実しており、2022年9月には100万ダウンロードを突破しています。2023年3月にはストア機能も使えるようにアップデートされたため、今後もますますユーザーは増えていくと考えられますので、自社ECサイトや店舗に誘導するためのツールとして出店を検討してみるのも良いでしょう。
◆Vintage.City(アプリ版)
参考:Vintage.City
古着をECサイトで扱う際の注意点
次に、ECサイトで古着を扱う際に注意しておくべき点を解説します。
① 「古物商許可」が必要となる
古着を販売するためには、「古物商許可」の資格が必要となります。所在地の管轄となる警察署に許可申請をすることで、2週間から1か月程度の審査の後、許可証が発行されます。審査に必要な書類は以下です。
◆古物商許可申請に必要なもの(個人申請)
・略歴書
・住民票の写し(本籍記載)
・誓約書
・身分証明書
・URLの使用権限があることを疎明する資料
法人の場合は、上記の他に「法人の定款」「法人の登記事項証明書」が必要になります。
参考:古物商許可申請 警視庁
「URLの使用権限があることを疎明する資料」は、ドメインの使用権利が自分にあることを証明する書類なので、プロバイダが発行するドメイン割当通知書や、Whois情報などの写しがあれば良いですが、ECサイトのトップページのプリントアウトでも問題ない場合があります。
いずれにしても、書類を準備する際に一度管轄の警察署のホームページを確認することをおすすめします。
② 基本的に一点物のため在庫管理に注意する
前に述べましたが、古着は基本的に一点物であるため、ECサイトの商品管理の在庫設定を「1」に設定しておくことが多く、売れるとすぐに「売り切れ」の表示になってしまいます。
売り切れ商品は早めに掲載を終了する必要があるため、必然的に古着のECサイトの在庫管理作業は頻繁に行うことになります。
また、店舗在庫とECサイトの在庫を共有している場合は、在庫連動システムなどを導入していない限り、手動で管理する必要があり、店舗で商品が売れたら、すぐにECサイトへ反映させる作業も発生するため、在庫管理には常に注意を払っておく必要があります。
③ 古着であることのリスクを明記する
古着は、実寸にも素材にも経年変化が起きているため、発売当時の公称サイズや洗濯表示などは保証されるものではなく、商品の状態や寸法などはすべて販売店に責任が所在します。そのため、前に述べたように、商品の状態や実寸については詳細に記載しておく必要があります。
ただし、細かいダメージなどが多いと、やむを得ずある程度記載を省略する場合もあります。そのような場合は、注意事項などで、古着特有のダメージがあるなどといった旨を記載し、ユーザーの理解を得るようにしなければいけません。
④ 常に市場価値を把握しておく
古着は、市場価値が目まぐるしく変わる商材です。トレンドに影響される部分もありますし、ヴィンテージ品などは、そもそも市場に出ている個体数も少なく、年々価値も高まっていきます。そのため、常に商品ごとの市場価値を把握しておき、価格に反映させていくことが重要になります。
また、市場価値が上がると、仕入れ値も上がりますし、そもそも仕入れること自体が困難になってきます。市場価値を常に把握しておくことで、市場での値動きもある程度予測できるようになってきますので、仕入れ値が上がる前に安く仕入れることも可能になってくるのです。
参考にすべき古着ECサイト3選
ECサイトの構築において売上を上げるためには、他社ECサイトの取り組みを参考にすることも非常に重要です。そこで、ここでは3つの古着店のECサイトを紹介します。
① 古着屋JAM
引用(画像):古着屋JAM(ジャム)公式オンラインショップ
株式会社JAM TRADINGが展開する古着専門店「古着屋JAM」は、デジタル施策に積極的に取り組んでおり、YouTubeチャンネル運営やライブコマース、自社アプリ運営など、さまざまな施策を行っております。
ECサイトにおいてはオムニチャネル施策を導入しており、実店舗とECサイトでポイントと会員情報を統合し、また独自開発のPOSシステムにより、在庫管理も一元化するなど、ECサイトと実店舗のサービスを融合させることで、ユーザーの利便性と満足度を高めております。
参考:繊研新聞「JAMトレーディング福嶋代表取締役社長 “日本一ファンの多い古着屋”目指す」(2022年5月5日掲載)
② セカンドストリート
引用(画像):セカンドストリートオンラインストア
セカンドストリートは、アパレルだけでなく、家具や家電も取り扱っているため、リユースショップという業態になりますが、古着ジャンルにおいて取扱数は非常に多く、専門性が高い店舗も多数あり、古着ファンにも注目されています。
商品ページでは、ブランドや商品の紹介ではなく、商品スペックについて詳しく記載されています。商品の状態はS~Dまでランク付けされており、サイズについても公称サイズではなく、実寸サイズを記載しています。
さらに、バーチャル試着も可能で、自身の身長、体重、年齢、性別を入力することで、サイズ感や着用感を教えてくれます。
◆セカンドストリートの商品ページ
引用(画像):セカンドストリートオンラインストア
参考までに、セカンドストリートの商品状態ランクは下記のようになっております。
コンディション | セカンドストリートが定める基準 |
N | 新品 |
S | 未使用品 |
A | ダメージや使用感がほぼない商品 |
B | 多少使用感のある商品 |
C | 使用感があり、多少ダメージがある商品 |
D | 使用感があり、大きなダメージがある商品 |
また、商品についての問い合わせがスムーズにできるように、問い合わせボタンも各商品ページの商品詳細スペースに設けられています。
③ RUSHOUT(ラッシュアウト)
引用(画像):古着屋RUSHOUT(ラッシュアウト)
RUSHOUT(ラッシュアウト)はアメリカ直輸入の古着を4万点以上そろえる人気古着店です。実店舗や自社ECサイトをはじめ楽天市場にも出店し、複数の販売チャネルで売上を上げています。
ラッシュアウトでは、集客にInstagramも活用しておりますが、店舗用アカウントと別に、古着コーディネート用のアカウントも運営しております。このアカウントでは、顧客のコーディネートを投稿してもらい、アカウント内で紹介する形になっています。
ユーザー参加型のアカウントにすることで、積極的にユーザーもアカウントを盛り上げてくれますし、店舗とユーザーの接点も生まれ、リピート購入の促進や、新規顧客の獲得につながっております。
◆ラッシュアウトの店舗アカウント
◆コーディネート用アカウント
まずはフリマサイトでの販売も検討する
古着をECサイトで販売するのが初めてであれば、まずは「メルカリ」や「PayPayフリマ」などのフリマサイトで、個人間取引から始めてみるのも良いでしょう。
なぜなら、古着販売におけるユーザーとのやり取りや、興味を引きやすい写真撮影のノウハウなどが実践的に学べ、梱包や発送など、ECサイトにおける必須業務を行うことができるからです。
古着に対する情熱を持って取り組むことが大事
古着をECサイトで販売する際には、通常のアパレルブランドのECサイトとは違った視点で商品のアピールをする必要があります。
また、幅広い知識と、常に市場価値を把握しておくことも必要なため、決してカンタンなことではありません。
しかし、洋服や古着が好きであれば必ずやっていける、と言われている業界でもあります。知識も大事ですが、何よりも情熱を持って取り組むことが一番大切です。
そしてもし、これから古着ECサイトの構築を検討するのであれば、インターファクトリーの「ebisumart zero(エビスマートゼロ)」もぜひご検討ください。ECサイトの売上を上げるためのさまざまな機能を実装しているクラウド型のカートシステムです。
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