コロナ禍の影響で、オンラインビジネスに注目が集まりましたが、その最たるものとして、EC業界があります。そして、ECサイトにはAmazonや楽天市場、ZOZOTOWN、ユニクロ、ビックカメラなど、多くのプレイヤーが存在しており、今日では誰もが利用したことがあるサービスです。
EC業界のメインプレイヤーを知れば、これから、EC業界に参入する方は、打ち合わせやパートナー募集する際には、必ず役に立ちます。なぜなら、EC業界では大手のサイトを知ることが、EC業界全体を知ることにつながるからです。大手を知ることで、EC業界に必要な知見を得ることができます。
本日はforUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、EC業界について解説いたします。
2021年国内BtoCのEC化率は8.78%(物販系)
まずは、経済産業省が毎年発表している最新のEC利用率の目安であるEC化率について解説します。
◆物販系分野のBtoC-EC 市場規模及びEC 化率の経年推移
コロナ禍の2020年にEC化率は一気に伸びて、8%を突破。そして、2021年には8.78%となりました。このようにEC化率はゆるやかではありますが、2000年以降のインターネットの普及、あるいは2010年以降のスマートフォンの普及により、右肩上がりの業界と言えるのです。
しかし、決して日本のEC化率が高いというわけではなく、世界のEC化率は、同資料によると19.6%と紹介されており、日本のEC業界は、世界のEC化率から比べるとまだまだ伸びる余地があると言えるのです。
EC業界のメインプレイヤー10社を紹介!
それでは、日本全体のEC化率が分かったところで、EC業界のメインプレーヤー10社を個別に紹介いたします。
①楽天市場
日本において、Amazonとシェアを二分しているのが楽天市場です。ユニクロやビックカメラなどのECサイトが「自社ECサイト」であるのに対して、楽天市場はショッピングモールであり、楽天市場自体が商品を販売しているのではなく、商品を販売するスペースを提供している形になります。
つまりインターネット空間におけるショッピングモールと言えるのです。楽天市場に出店している店舗は2022年3月時点の情報で56,000店舗以上となっており、小規模事業者から、ニトリやヤマダ電機のような大手事業者まで多くの企業が出店しております。
②Amazon
Amazonは日本でも利用率が最も高いECサイトです。Amazonも楽天市場も、直接商品を販売するわけではなく、出店者・出品者を募る形のECサイトです。
楽天市場の場合は、下記のようにお店を出店して、いろいろな商品をそこで販売します。
しかし、Amazonの場合は、以下のように出品という形を採用しており、商品ページでは、お店の露出はほとんどなく、商品を露出する形になるのです。
楽天市場では、ある程度自社の世界観やブランドを露出できるため、リピーターを獲得しやすいのですが、Amazonではそれが難しいのが特徴です。
しかし、群を抜いた商品点数の豊富さと、確立された物流システムはAmazon最大の強みであり、また翌日配送や送料無料の「Amazonプライム」や、自宅で試着できる「Try Before You Buy」があったりと、EC業界のスタンダードを変えていくようなさまざまなサービスが提供されております。
参考:Amazon
③Yahoo!ショッピング
Yahoo!ショッピングは、Yahoo!が運営するショッピングモールです。日本国内では大手ショッピングモールは楽天市場とAmazonが有名なのですが、実は出店者数だけで言えば、2021年8月時点で117万事業者とYahoo!ショッピングが最も多いのです。
なぜなら、Yahoo!ショッピングは2013年に孫正義氏から発表された「eコマース革命」により、出店費用や固定費用がほとんどかからない形になったことがあり、そのため出店の敷居が下がり多くの事業者が出店したため、楽天市場やAmazonよりも出店者を集めることに成功したのです。
参考:【2021年最新版】国内のECサイト・ネットショップの総稼働店舗数(eccLab)、買い物革命、始動!(Yahoo!ショッピング)
ただし、多くの出店者が集まりすぎたために、Yahoo!ショッピング内での各店舗の露出がレッドオーシャン化しており、Yahoo!ショッピングで商品を売るのは楽天市場よりも難しい印象があります。
また、楽天市場と違い、月商1,000万超えの事業者が少なく、多くの小規模事業者がしのぎを削っている面があると業界では言われています。今後は、Yahoo!ショッピング内の広告や露出力アップのためのノウハウの共有などが行われることで、出店者を盛り上げていく工夫が必要と言えます。
Yahoo!には日本一のポータルサイトの「Yahoo!JAPAN」があり、そこからの流入で非常に多くのユーザーが集客でき、またPayPayとの連携など、Yahoo!経済圏の拡大が見込めます。
参考:PayPayは「国民の財布」を目指す。LINE・ヤフーID連携で経済圏拡大(Impress Watch)、Yahoo!ショッピング
④ZOZOTOWN
若い人の多くが利用しているのがZOZOTOWNです。ZOZOTOWNはアパレル専門のショッピングモールであり、多くのアパレル事業者が出店しています。ZOZOTOWNのメリットは、何と言っても出店し、ZOZOTOWNの倉庫に商品を送るだけで、ささげ業務の全てを実施し、出店に関わる全ての作業を委託することができる点です。
そのため出店手数料が割高になっており、公表されてはいませんが、販売価格の20〜40%と言われています。
ただ、この全てを依頼できる点がデメリットと感じる事業者もおります。例えば自社で撮影した写真をZOZOTOWNに登録したい、などの要望に対応できていない面がありましたが、現在では自社の写真素材も使えるように変更されました。
写真の点については改善されましたが、全ての業務を委託できるということは、意図しない形での出品になる可能性もあるので注意が必要です。実際に、同じ商品でもブランド公式サイトのサイズ表記と、ZOZOTOWNのサイズ表記が異なっていることもあります。
一時期、ZOZO離れが騒がれ、ZOZOTOWNへの出店をやめるアパレル事業者が多かったのですが、コロナ禍に突入し、再びZOZOTOWNへの出店も増えてきました。ZOZOTOWNに出店する際は、自社ECサイトとの在庫管理の連携が課題という事業者も多かったかもしれませんが、下図のようにそれを補うソリューションも生まれております。
◆「Fulfillment by ZOZO」導入イメージ
ZOZOBASE(ZOZOTOWNの物流センター)と連携できるフルフィルメントサービス「Fulfillment by ZOZO(フルフィルメント バイ ゾゾ)」を導入することで、自社ECの在庫とZOZOTOWNの在庫が一元化され、在庫ロスがなくなり業務効率化の実現が可能になりました。
⑤ユニクロ
ユニクロは世界で最も勢いのあるアパレルブランドの一つではないでしょうか?店舗販売のイメージが強いかもしれませんが、ユニクロはECにも力を入れており、2021年8月期決算のEC化率は15.1%と、EC化率、EC売上ともに右肩上がりに伸びています。
◆国内ユニクロ事業のEC売上とEC化率の推移
出典:国内ユニクロのEC売上は約18%増の1269億円、ジーユー事業は推定274億円【2021年8月期】(ネットショップ担当者フォーラム)
ユニクロは、その店舗網を利用してECサイトで買った商品を店舗で受け取れるようにしたり、また店頭で商品のバーコードをスキャンするとアプリの商品ページに繋がり、その場でレビューを参照できるようにしたりなど、オムニチャネル施策に力を入れております。
また、以下をご覧ください。ユニクロのECサイトはおすすめサイズが分かりやすく、また他の服との組み合わせなどが把握しやすいようになっております。
◆ユニクロ:購入を助ける多彩な機能を持った商品ページ
⑥ヨドバシカメラ
ヨドバシカメラのECサイトは、EC業界でも成功事例としてよく紹介されるサイトです。今から10年前、Webルーミングというユーザーの行動が話題になりました。端的に言えば、店舗で商品を確認した後、インターネットで最安値のサイトを探して購入するユーザーが非常に増えたことがありました。
しかし、ヨドバシカメラはそれを逆手にとり、店舗にヨドバシ.com(ECサイト)で購入するための案内を増やしています。そしてヨドバシカメラは配送網が全国に整備されており、当日配送エリアが拡充されております。
ついで買いができるように日用品のラインナップも充実しているなど、ヨドバシカメラにはリピート購入が増えるような戦略が多く、それが家電ECの成功につながっているのです。
参考:ヨドバシ.com
⑦ビックカメラ
ビックカメラのECサイトはUIを改善し、使いやすいECサイトを目指すなど、リピート購入されやすいECサイトを目指しています。その一貫として商品下取り価格を売値に反映させたり、クーポン機能の改善などECサイトの改修に力を入れています。
事実、日用品や家電を扱う企業のスマートフォンECサイトランキングでも、そのユーザビリティが高く評価され1位を獲得しております。
◆2020年スマートフォン版ECサイトランキング<日用品・家電編>
出典:スマホECサイトランキングTOPは『ビックカメラ』 トライベック・ストラテジーが「スマートフォン版ECサイトランキング<日用品・家電編 2020>」を公表(ECのミカタ)、ビックカメラ.com
⑧ニトリ
ニトリは、自社ECサイトだけではなく、楽天市場にも出店しておりECでの拡販に非常に力を入れております。
また、ニトリのアプリでは新製品のプロモーションだけでなく、スマホのカメラを使った拡張現実(AR)機能を使い、自宅の設置場所のサイズを計測してくれる「サイズwithメモ」という機能があり、ECサイトでは確認しづらい自宅の設置場所を決める際のサポートをしてくれます。
◆「サイズwithメモ」実際の画面
また、ニトリのECサイトは、ユーザーに伝えたい内容を写真内に記載し、商品写真を見るだけで商品の特徴が伝わるような工夫がされています。
参考:ニトリネット
⑨オイシックス
オイシックスは、頒布会という分野のECサイトです。頒布会というのは、契約を結ぶと決まった周期で、商品を届けてくれるサービスです。オイシックスのサービスは決まった周期で異なる献立キット(食品の詰め合わせ)を送付、また食品を調理するレシピも付いており、ご家庭でおいしく、ヘルシーな食品を受け取れるサービスを提供しております。
また、オイシックスでは、段ボールまでこだわっており、段ボールにはおいしい食材の使い方などが書いてあるため、初めてオイシックスのサービスを受け取った人は、その購入体験に感動し、そのままサービスを利用し続けるのではないでしょうか。
参考:【公式】オイシックス
⑩セシール
総合通販大手のセシールは、テレビやカタログ販売などの通販で有名でしたが、昨今はECサイトでの売上も伸ばしております。ディノスでは会員登録にも力を入れており、ECサイト上で商品の抽選や、LINEアカウントの友だちによるID連携など、訴求に力を入れております。
主婦が気になるあらゆる商品をラインナップに入れており、またセール期間や商品販売の残り時間を表記して「今すぐ買わなきゃ感」を演出するなど、マーケティングにも注力しています。
知っておくべきEC業界の専門用語
EC業界で独自に使われる用語も多く存在します。その中でも、これからEC業界を目指すなら知っておくと良いものを紹介します。
オムニチャネル、OMO、ユニファイドコマース
オムニチャネル、OMO、ユニファイドコマースは厳密には概念が異なる用語ですが、EC業界の現場では、ほとんど同じ意味で使われており、細かい違いはほとんどありません。
この3語、カンタンに説明すると、ECサイトと実店舗の連携のことを指します。オムニチャネルは、ユーザーから見て、あらゆるチャネルで買い物ができる状況を構築することであり、OMOは、オンラインがオフラインを包み込んで、全てをデジタル化して把握することです。そして、ユニファイドコマースは、オムニチャネル構築後に顧客体験を進化させることを目的とします。
つまり、いずれの用語もECサイトと実店舗との連携により、リピート購入を促進させることで売上を上げるためのキーワードとして使われております。
越境EC
越境ECは、その名のとおり、海外向けのECサイトのことです。コロナ禍前まではインバウンド需要で日本国内が大いに盛り上がりました。その影響で中国国内から日本の商品を買いたいという需要が高まり、越境ECも、インバウンド需要と同じく盛り上がりました。
越境ECを実施する方法は、主に以下の3つです。
②自社ECサイトを立ち上げる
③国内用のECサイトに「海外転送サービス」のタグを入れる
①の方法は、出店したい国の審査を通過する必要があり、小規模事業者では審査が通りにくいショッピングモールもあります。②の方法は、ブランド力がないと自社ECサイトへの集客が難しいというデメリットがあります。
それに対して③の方法は、自社で集客する必要はありますが、ECサイトにJavaスクリプトを1行追記するだけで、ECサイトにアクセスした国の言語で「商品を代行購入する」というバナーが出てくるので、すぐに越境ECを始めることができます。転送サービスは、商品購入から海外配送まで代行してくれるので、事業者の負担も少なくサービスを利用することができます。
いずれにせよ、越境ECにおいては「集客」「決済」「配送」をどのようにするか考える必要があり、カンタンではありません。
D2C
D2C(DtoC)は、Direct to Consumerの略で、メーカーがECサイトを持つことで直接ユーザーに商品を販売することができるビジネスモデルです。これに対する従来の日本の商習慣では、卸に商品を販売したり、代理店が販売するなどのビジネスモデルが主流でした。従来のビジネスモデルではメーカー側の利益が少なかったため、自社でD2CのECサイトを運営することで、利幅を大きくすることができます。
ただし、D2Cは自社でユーザーに商品を直接販売していくため、商品のプロモーション、ECサイトに付随するアフターサービス、返品対応などもすべて自社で対応しなければいけません。
ヘッドレスコマース
ECのテクノロジーは非常に変化が激しい分野であるといえます。そのため、ECサイトのフロントエンド(ユーザーから見える部分のこと)が、SNSになったり、あるいは複数のチャネルを持ったりと、売上向上のためにあらゆるチャネルに対応する必要がありますが、その都度個別のECサイトを作るのは非常に効率が悪くなります。
そこでECサイトを「フロントエンド」と「バックエンド(在庫管理・配送情報など裏側のシステム部分のこと)」に分けて、それぞれをAPI連携する形にする方法があります。この連携のメリットは、フロントエンドを複数作っても、バックエンドはAPI連携により一つで済むという点です。
また、従来のECサイトではフロントエンドの改修にはバックエンドも影響していましたが、ヘッドレスコマースにおいては、フロントエンドとバックエンドを完全に分けることで、フロントエンドの改修に専念することができるので、開発期間を短くできるというメリットもあります。
ヘッドレスコマースは、NIKEなどの大規模ECサイトで採用されており、業務効率化においても、最新のマーケティング戦略を追求するにも最適な仕組みとなります。
EC業界は変化の激しい業界
EC業界は非常に変化の激しい業界と言えます。3年前に登場した言葉やサービスが下火になっていたり、あるいはヘッドレスコマースやユニファイドコマースなどの新しい仕組みや考え方が次々と出てきています。
もしこれからEC業界を選ぶのなら、それは良い選択と言えます。その理由は下記の3つです。
②オンラインで商品を売るノウハウは有力なキャリアとなる
③ECを軸にいろいろな業界に詳しくなれる(アパレル、家電等)
もし、EC業界を目指すなら、まずは、費用をかけずにメルカリやヤフオク!で商品を販売してみましょう。なぜなら、そこで商品を販売し、配送するまでのやり方は、ECサイトで商品を売る工程と全く一緒だからです。購入意欲を上げるための商品の見せ方、顧客とのやりとり、梱包や配送手配など、個人売買も企業ECサイトでの取引も根本的に違いはありません。
そこである程度の実績を積んだら、カートシステムサービスを導入して、簡単な自分のECサイトを開設してみてはいかがでしょうか。そこからは、プロモーション、つまり「集客」のことも考えていくことになります。
費用を抑えて手早くECサイトを開設するなら、インターファクトリーのebisumart zero(エビスマート ゼロ)をご検討ください。特に新規参入の企業に適した、多機能なECプラットフォームです。
詳しくは下記公式ホームページをご覧ください。
少しずつ実践を積んでいくことで、ノウハウの蓄積とともに、業界のトレンドや動向も見えてくるはずです。