2022年8月に経済産業省より、最新のEC化率(2021年実績)が発表され、国内のEC化率は8.78%でした。昨今コロナ禍において、特に2020年にはEC化率が急激に伸びたのですが、2021年度はあまり伸びていませんでした。それは、コロナ禍の制限が緩和され始め少しずつ外出する機会も増えたため、伸び率にブレーキがかかったことが要因と考えられます。
しかし、将来的な少子高齢化が避けられないであろう現状を鑑みると、国内のEC化率は今まで以上に高めていく必要があります。働き手が減少し、生活必需品などの店舗購入も難しい社会がやってくる可能性があるからです。
特に今後さらに需要が高まってくるであろう物販系ECにおいては、現状をしっかり把握してEC化率を伸ばしていく施策を早急に行うべきです。
本日は、forUSERS株式会社で、マーケティングを担当している筆者がEC化率について解説いたします。
※この記事で紹介するデータや表・グラフは、下記の経済産業省のデータとなります。
出典:経済産業省「令和3年度電子商取引に関する市場調査報告書」(2022年8月発表)
日本の物販系分野BtoCのEC化率
まずは、経済産業省から発表のあったEC化率の直近9年間のデータを見てみましょう。
◆EC化率
コロナ禍の影響で、リアルの店舗需要が下がりオンライン需要が急激に伸びました。そのため2019年から2020年は急激にEC化率が伸びました。
しかし、2020年から2021年においては、そこまでEC化率が伸びませんでした。
筆者もこの結果には驚いたものの、データから以下のようなことが理由ではないかと推察します。
理由② EC化、オンライン化を進める企業の多くは、2020年時点で対応した
理由③ ECやオンラインビジネスを実施したものの、売上にはつながらなかった
それでは、世界のEC化率はどうでしょうか?
世界のBtoC分野のEC化率
以下は、経済産業省がeMarketer, Jul 2021をもとに作成したEC化率のグラフです。主に物販系の指標となります。
EC化率の算出方法が異なるので、日本のEC化率と単純比較はできませんが、2021年時点では、日本の8.78%を大きく上回る19.6%となっております。算出方法が異なるとはいえ、世界のEC化率からは大きく後れを取っているのは否めない面があります。
ただし、日本のEC市場は世界4位であり、ランキングで見ると決して遅れているわけではありません。しかしEC市場規模の多くは、中国とアメリカで70%以上の市場規模となるために、日本のEC化率が遅れているように見えるのです。
特に日本では、少子高齢化社会に突入しており、店舗運営を担う若者の数が少なくなっているため、ECサイトを利用して、社会全体で効率化をしていかなくてはいけません。
それでは、日本のEC化率をそれぞれの分野ごとに解説していきます。
物販系分野の7つの業界別の考察
それでは、経済産業省のレポートから筆者が独自に作成した以下の表にもとづいて、解説します。
引用:経済産業省「令和3年度電子商取引に関する市場調査報告書」(2022年8月発表)、「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)報告書」(2021年7月発表)より筆者作成
ここでは、2020年から2021年のECの伸び率が高い順に、それぞれの分野を考察してまいります。
①食品EC(食品、飲料、酒類)
2020年から2021年にかけて、最もECにおける市場規模を伸ばしたのが食品分野です。食品ECは、もともと以下のような理由から、ECサイトと相性は良くありません。
・鮮度を保ったまま配送しなくてはならない
・スーパーやコンビニの利便性が高くECの利用率が低い
しかし、コロナ禍においては人との接触を避けるためにネットスーパーなどの食品ECの利用が進みました。
しかし、それでも、EC化率は3.77%であり、この分野のEC化率を伸ばしていかないと国内全体のEC化率が伸びませんし、将来の人手不足を補うためにも重要な分野です。もし、食品ECの利用が10%を超えれば、EC全体の利用率も格段と上がるはずです。
しかし、食品ECにおいては、物流拠点の整備も欠かせないので、単に食品ECの利用を促すだけではなく、物流拠点の整備も進めていかなければなりません。
大手ECサイトのAmazonでは、2017年より国内で「Amazonフレッシュ」というサービスを開始しました。生鮮食品を中心に、お酒や日用品などの生活必需品を自宅に届けてくれるサービスです。
注文から最短2時間で配送が可能という驚きのサービスですが、生鮮食品の保管設備が整っている物流拠点が、2021年11月時点では「アマゾン川崎FC」のみなので、必然的にサービス展開エリアが東京・神奈川・千葉の一部と限られているため、物流拠点の拡大が今後の課題となっています。
しかし、Amazonは「Amazonフレッシュ」とは別に、成城石井やライフコーポレーション、バローホールディングスなどの既存スーパーと提携し、Amazon内でネットスーパーを展開し始めています。こちらは各事業者の各店舗が拠点となるため、今後一気に対応エリアが拡大されるはずです。
また、提携する食品事業者も増えていくことが予想されるため、このAmazonのネットスーパー事業の推進により、今後の食品ECの市場規模は大きく変わっていくに違いありません。
②化粧品EC(化粧品、医薬品)
2014年6月12日に薬事法の一部改正法が施行されたことで、医薬品をECサイトで販売することが可能になりました。
参考:一般用医薬品のインターネット販売について(平成26年7月/厚生労働省)
そしてコロナ禍になり、マスクなどのECサイト購入が格段に増えました。
21年の医薬品・化粧品小売業は15兆260億円で19年の10兆5380億円から急伸、物販系ECにでも「化粧品、医薬品」は19年比29.4%増の8552億円と伸ばしたが、マスクや消毒液など衛生関連用品の購入が大きいとみられる。
食料品とともに、もともと市場規模の大きい医薬品分野が伸びれば、全体として国内EC市場も伸びてきます。その一方で化粧品ECは、テレワークやマスクの影響により全体の出荷数が大きく減少したため、市場規模はあまり伸びなかったと筆者は予想しますが、経済産業省のレポートでは、医薬品と化粧品は同じカテゴリーになっているため具体的データは不明です。
ただし、2019年から2020年と同様に、2020年から2021年にもEC市場規模が伸びていることから、2021年には化粧品の需要が高まってきたことも関係しているのではないでしょうか?
③アパレルEC(衣類・服装雑貨等)
もともと、アパレルECのEC化率は高く、2019年でも13.87%もありましたが、2021年には21.15%までEC化率が伸びました。しかしコロナ禍で多くの方は外出を控えたため、服の購入頻度自体は下がりました。
しかし、もともとアパレル分野はECの利用が進んでいた分野であるため、誤解を恐れず表現するならコロナ禍における準備がすでに整っていた分野とも言えます。ZOZOTOWNやユニクロなどの大手ECでは、バーチャル試着サービスや、あるいは店舗を利用したスムーズな返品対応(オムニチャネル対応)などが整っており、また若者はECサイトで服を買うことに抵抗がなかったことも、コロナ禍においてECで服を買うことへつながったと言えるでしょう。
また、ECサイトはInstagramとの相性がバツグンで、アパレルはインスタ映えしやすい面もあり、集客しやすいというのも特徴です。このような背景がもともとあったため、コロナ禍に利用が進んだと考えます。
④自動車・パーツ業界のEC(自動車、自動二輪車、パーツ等)
高額商品であるため、ECよりも店舗での購入が主流となるため、ECの利用はニッチとなります。また、パーツに関しては、自動車やオートバイに取り付けるにはハードルが高いため、素人には難しいという商材の特徴があります。そのためEC化率は2019年には2.88%とかなり低い数字でした。
しかし、コロナ禍においてはECの利用が活発化し、2021年には3.86%と大幅に伸びました。この理由は以下の3つが考えられます。
理由② テレワーク化が進み、余暇に費やす時間が増え、パーツ等の需要が伸びた
理由③ 半導体不足により新車が買えず、所有者のカスタム需要が高まりECの利用も増えた
経済産業省のレポートには、この分野の実態が「車」なのか「パーツ」なのか、までは書かれておらず、類推するしかありませんが、このような仮説を筆者が独自に立てました。なお、パーツのECサイトとしては下記サイトが有名です。
⑤本やCD、DVDのEC(書籍、映像・音楽ソフト)※デジタルを除く
この分野もコロナ禍で飛躍的に市場規模が増えました。すでに他の分野で触れましたが、以下のような理由が推測されます。
理由② 店舗需要の低下
理由③ 漫画「鬼滅の刃」の大ヒット
③の「鬼滅の刃」のヒットですが、このようなメガヒットは、業界全体を活気付けます。例えば2017年にもこの分野の需要が高まったことがあります。それは歌手の安室奈美恵が引退することによる記念CDやDVDが売上を一気に上げたことによります。
参考:【年間本ランキング】『鬼滅の刃』最終巻が500万部越えで史上初の快挙 総合1位は『スマホ脳』、現代人への課題を提示(2021年11月29日/ORICON NEWS)、安室奈美恵さん、年間総売上190億円を記録(2018年12月20日/産経ニュース)
電子書籍やサブスクリプションを含まないこの分野ですが、モノとして記念に持っておきたい需要は、今後も一定数はあるため、この分野はヒットと市場規模が深く関係するのです。
⑥家具・インテリアEC(生活雑貨、家具、インテリア)
実は、家具やインテリアなどは店舗で購入しても自分で家に持っていくのは困難なため、宅配によるお届けサービスが一般的で、物流が整っている分野でもあるためEC化率がコロナ禍以前より高い分野でした。しかし、コロナ禍に入り、EC市場は伸びたものの、他の分野よりは伸びませんでした。
とはいえ、巣ごもり需要が伸びたこともあり、外出できないコロナ禍は家のインテリアを充実させる動きもメディアで多数取り上げられました。
すでに、EC化率が28.25%と非常に高い分野でありますが、ニトリや無印良品ではアプリ利用を推進するなど、さらにEC化率が伸びる余地がある分野であるため、今後の市場規模の成長が期待されます。
⑦家電EC(生活家電、AV機器、PC・周辺機器等)
この分野も、家具ECと同じくもともとECと非常に相性が良い分野です。そのため2021年はEC化率が38.13%もあります。家電がECと相性が良い理由は、型番さえ同じであれば、どこで買っても品質に差が出ないため、インターネットで検索すれば、日本一安いお店を知ることができ、ユーザーは店舗よりも安い価格で家電を手に入れることができるためです。
もちろん、コロナ禍においては、家庭用PCの購入やテレワーク推進によるエアコン購入の動きもありましたが、EC化率がすでに高かったことから、2020年から2021年にかけてはさほどEC化率が伸びませんでした。
今後国内のあらゆる分野でのEC化率の伸長は最重要課題
今回は物販系7つの業界におけるECの現状について考察しました。コロナ禍以降、ECの利用率は伸びたものの、世界と比べてやはり国内EC化率はまだまだ低いのが実情です。
今後、少子高齢化を迎えるにあたって、過疎化が進む地方から働き手が減少し、生活必需品などが店舗購入しづらくなる社会がやって来るでしょう。特に食品や医薬品など、EC化率が低水準の分野においてはEC施策を強化し、将来の需要に備えていく必要があります。
そのためには、各分野において人員や物流拠点の拡充を進め、ユーザーのリテラシー向上とともに業界全体でECの利用を推進していくことが重要です
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