アパレルECサイトの運営において押さえておくべきポイント

アパレル事業者がECサイトの開設を検討する際に、その運営業務の内容について実はよく分かっていないという場合も多いのではないでしょうか。

アパレルECサイトの運営においては、その商材の性質上、以下5つの押さえておくべきポイントがあります。

① コンセプトや世界観の確立
② SNSの活用
③ トレンドの把握
④ コンセプトに沿った商品の仕入れ
⑤ シーズナリティを意識する

アパレルECサイトの運営業務は多岐にわたりますが、まずはこの5点をしっかり把握しておくことが重要です。

本日は、forUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、アパレルECサイトの運営業務について詳しく解説します。

アパレルEC運営において重要なポイント

まず、冒頭でも述べた通り、アパレルECサイトの運営にあたって押さえておくべき重要なポイントは以下の5点です。

① コンセプトや世界観の確立
② SNSの活用
③ トレンドの把握
④ コンセプトに沿った商品の仕入れ
⑤ シーズナリティを意識する

それでは、一つずつ解説します。

ポイント① コンセプトや世界観の確立

アパレルEC運営を始めるにあたって最も重要なことは、ブランドコンセプトを決めることです。コンセプトによって仕入れる商品や販売戦略の方向性が決まるため、コンセプトは一番最初に明確にしておく必要があります。

どんなターゲット層にどんな商品を提供したいのかを考えながら、以下のようにコンセプトを固めます。

「10~20代の若者が最先端のトレンドアイテムを手ごろに楽しめる」
「30代以上の男性向けのレトロ感や高級感のあるアメカジショップ」

ブランドコンセプトを明確にすることで、ECサイトやSNS、その他プロモーションなどが、そのコンセプトに基づいた一貫性のあるものになっていきます。そのようにして出来上がるのが、ブランドの「世界観」です。

世界観を確立することで、ユーザーはその世界観に魅了され、共感したときにブランドのファンとなり、商品を継続的に購入してくれるようになるのです。

ポイント② SNSの活用

アパレルECの運営において、SNS施策は欠かすことのできない重要な施策です。特にInstagramは、ビジュアルの重要度が高いアパレル商品において非常に訴求効果の高いSNSであり、直接ECサイトにつながる導線になるため、販売チャネルの一つとして活用できます。

また、TikTokやYouTubeといったメディアも、動画で商品紹介することでECサイトでは伝わりきらない魅力を伝えやすいため、積極的に活用していくべきでしょう。

そして、SNSは商品紹介などの販売促進に加えて、コメントでユーザーとのコミュニケーションが取れる貴重な場でもあります。SNSでユーザーとのタッチポイントを増やしてファンを育成し、売上につなげていくことが大切です。

ポイント③ トレンドの把握

アパレル業界におけるトレンドは移り変わりが激しく、トレンドを過ぎた商品は一気に売れ行きが悪くなります。そのため、常にトレンドを意識して、旬の商品を扱っていくことが重要です。トレンドの商品が並んでいれば、ユーザーも「このサイトで買っておけば間違いない」という意識になるはずです。

ただし、トレンドを意識しすぎてコンセプトから外れてしまうと、ブランドとしての軸がぶれてしまうため注意が必要です。

アパレルにおけるトレンドは、アイテム自体がトレンドとなったり、サイズ感、色、素材などさまざまな要素においてトレンドが生まれます。そのため、全体のトレンドを把握しつつも、どういったトレンド要素が自社のブランドに取り入れることが可能なのかを検討する必要があります。

ポイント④ コンセプトに沿った商品の仕入れ

前項でも触れましたが、前提として常にブランドコンセプトに沿った商品を展開することです。コンセプトやターゲット、そして価格帯がぶれてしまうと、せっかく顧客となってくれたユーザーが離れてしまう可能性もあります。

例えば高級感をうたったコンセプトであれば、使用する生地の質や縫製がしっかりしていないと、ユーザーに不信感を持たれてしまうでしょう。逆に、プチプラをコンセプトにしたブランドで、原価の高い素材を使用しすぎてしまえば、利益になりません。

アパレル商材の仕入れの際は、ブランドコンセプトに基づいて、販売価格や原価、素材の質、利益などのバランスを慎重に検討して、自社のコンセプトとターゲットに沿った最良の商材を見極めることが重要です。

ポイント⑤ シーズナリティを意識する

アパレルECで商品を販売する際、シーズナリティ(季節性)を踏まえておくことが重要です。

アパレル業界には「S/S」と「A/W」という2つのシーズンがあります。

S/S => Spring / Summer(春夏:3月~8月頃)
A/W => Autumn / Winter(秋冬:9月~翌年2月頃)

アパレル業界では、販売者側も購入者側もこの2つのシーズンのサイクルによって動きますので、それぞれのシーズンにおいて販売する商品のタイミングを、購入者のニーズに合わせることが重要です。

購入者側が「もう9月だし、そろそろ秋物を買い始めよう」と思ったときに、Tシャツなどの夏物を前面に販売しているショップを見たらどう感じるでしょうか。販売機会を失うと同時に、ユーザーからも季節感のないショップと思われてしまいます。

販売側の動きとしては、シーズンが切り替わる2か月くらい前に、次のシーズンの商品の準備に入るくらいが理想です。

以上が、アパレルECサイトの運営で押さえておくべき重要なポイントです。次に、サイトの運営における実際の業務について解説します。

ECサイト運営は大別して2つある

まず、ECサイトの運営は「フロント業務」と「バックエンド業務」の2つに大別されます。

フロント業務

フロント業務は、主にマーケティング施策や仕入れ、販売ページの作成など、商品を販売して売上を上げるための業務です。

トレンドやユーザーニーズに合った商品の仕入れや、集客のためのプロモーションを行うなど、売上に直結する業務が主となるため、EC運営において特に重要な位置付けにあります。

バックエンド業務

バックエンド業務は、商品の管理や発送、アフターフォローなど、ECサイトの運営を支える業務が主になります。

業務量が多く、正確性も求められるため、ECサイトの運営においてはバックエンド業務の効率化を常に意識する必要があります。

以上の2つの分類における業務内容について、以下に解説します。

アパレルEC運営における7つの業務内容

それでは、アパレルECサイトの運営における実際の業務内容について解説していきます。主な業務内容は以下の7つです。

① 商品の仕入れ:ブランドコンセプトと販売予測に基づいて仕入れる

商品の仕入れは、ブランドコンセプトと販売予測に基づいて行います。ブランドコンセプトに沿った商品選択を行い、販売予測をきちんと立てた上で仕入れを行うことで、販売機会の損失や余剰在庫などを最小限に抑えることができます。

アパレルECでは、ネットや展示会、問屋などから商品を仕入れますが、トレンドの商品やバズにより注文が殺到することもあるので、複数の仕入れ先を確保しておくべきでしょう。

大量ロットで仕入れることでボリュームディスカウントが適用されたり、交渉次第で割り引いてもらえることもあるので、仕入れの際はある程度まとまった単位で仕入れたほうが良い場合があります

そして、先に述べたように、シーズナリティも意識して季節商品は早めに仕入れることが重要です。シーズンが切り替わる前に次シーズンの商品をそろえておくようにしましょう。

② マーケティング:アパレルECではSNS運用に特に注力すべき

マーケティングは、自社の商品やサービスを知って、購入してもらうための販促施策を行う業務です。ECサイトにおける主なマーケティング施策は下記の通りです。

・Web広告
・コンテンツマーケティング
・キャンペーン企画
・SNS運用
・ランディングページ作成
・バナー作成

まず、先に述べたように、アパレルECでは特に注力していくべきはSNS運用でしょう。特にInstagramはアパレル商材と相性の良いSNSツールです。

インスタライブによるライブコマースも、効果の高いWeb接客施策として多くのアパレルブランドで活用されており、Instagramを積極的に活用することで売上を伸ばしています。SNS運用は、もしリソースがあればSNS担当者を立てて注力すべきマーケティング施策です。

Web広告については、短期的に効果を得られる施策のため即効性があります。しかし、ある程度予算がかかるため、アパレルのECサイトの商品単価を考えると利益を出しづらくなる面もあるので、運用は慎重に行う必要があります。

Web広告については、下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

関連記事:ECサイトの基本的な7つのWEB広告と優先順位の解説(ebisumart Media)

コンテンツマーケティングではブログ施策がおすすめです。中長期的な施策ではありますが、Web広告に比べて予算のかからないプロモーション戦略で、継続的な集客が期待できる施策です。具体的な方法は下記記事で解説していますので、こちらもぜひご覧ください。

関連記事:自社ECサイト・ネットショップの集客方法を解説(ebisumart Media)

③ ささげ:試着できないECサイトでは採寸の精度が重要

「ささげ」とは、「撮影(つえい)」「採寸(いすん)」「原稿(んこう)」の3つの業務の頭文字を取った用語です。

ささげ業務は、アパレルECに限定した業務ではありませんが、アパレルECサイトの運営においては非常に重要となってくる業務です。

見た目が重要なアパレル商品は、写真のクオリティが売れ行きを左右することは言うまでもありません。また、商品を試着することができないECサイトにおいては、記載されている寸法だけが頼りです。そのため、採寸の正確性は極めて重要で、実寸と異なる採寸表記があるとクレームにもつながってしまう可能性があるので注意が必要です。

④ 商品の受注:SKUが多いため受注確認ミスに注意

ECサイトから注文が入ったら、下記の流れで受注処理を行います。

◆受注処理

① 購入者への注文確認メールの送付
② 在庫状況の確認
③ 出荷指示

注文確認メールは、一般的にはECサイトのシステムでメールの設定をしておけば、管理画面上で注文ステータスを切り替えることで自動で送信されます。ただし、これは注文内容をシステムで取り込んで自動送信する確認メールに過ぎないので、多くの場合は、追ってスタッフが在庫状況を確認の上、配送日数目安や金額についての詳細を含め、改めてメールを送信します

注文を受けた後は、速やかに在庫の確認を行います。アパレル商品の場合、商品あたりのSKU※が多く、サイズやカラーの確認ミスが起こりやすいため注意が必要です。

※SKU…ストック・キーピング・ユニットの略語で、一つの商品に対する最小単位。アパレル商品においては、サイズやカラー展開の数だけSKUが増えていく。

また、自社ECだけでなく、ショッピングモールにも出品している場合などは、在庫の引当ミスにより「受注したにもかかわらず在庫が欠品してしまった」ということもあるため、こまめに在庫を確認しておくことが重要です。

⑤ 在庫管理・登録:アパレルは販売予測が難しいため、こまめな在庫管理が重要

在庫管理は、ECサイトのバックエンド業務の中でも難しい業務の一つです。過剰在庫はコストになってしまうだけですし、在庫が欠けてしまっては機会損失になってしまいます。こまめに在庫確認を行いながら、販売予測に基づいて、できるだけ過不足ない適正在庫を保っておくことが重要です。

特にアパレル商品は、1商品あたりのサイズ展開やカラー展開が多く、それぞれに販売予測が異なります。また、トレンドの移り変わりが激しく、季節商品もあるため、商品のライフサイクルが短いことから、販売予測が非常に難しい商材なのです。

ごく小規模のショップであれば手作業でも管理することは可能ですが、中規模以上になってくると手作業では困難なため、在庫管理システムを導入して、リアルタイムで在庫を管理することが現実的な方法となってくるでしょう。

また、アパレルECサイトでは、商品の登録も負担の大きい業務です。採寸情報の登録や、それぞれの商品にカテゴリやサイズ・カラーなどのバリエーションもあるため、地道な作業ですが、ミスのないよう慎重に行う必要があります。

⑥ 梱包・出荷:サイズや種類に合わせて最適な配送サービスを利用する

受注した商品をピッキングして、梱包、配送手配を行います。アパレルブランドでは、アクセサリーなどの小物から、ブーツや冬物のコートなど比較的大きいサイズまで、さまざまなサイズや種類の商品を扱うため、その都度、最適な配送サービスを選択します。商品に合わせて配送業者を使い分けても良いでしょう。

商品のピックアップから発送までの一連の流れの中には、納品書や送り状の作成、お礼状・パンフレット・チラシなどの同梱物の封入作業、購入者への発送完了および追跡番号の連絡メールの送付といった細かい業務も含まれております。

⑦ アフターフォロー:EC運営において貴重なユーザーとのコミュニケーションの場

納品後の顧客対応も重要な業務です。もし、お客様からクレームがきた場合は、慌てずに迅速かつ丁寧に対応しましょう。むしろ、ユーザーと対面することのないECにおいて「お客様と直接コミュニケーションを取ることができるチャンス」ととらえて、誠実に対応することで、逆にファンになってくれる可能性もあります。

また、アフターフォローには、クレームや返品対応だけではなく、リピートを促すアクションもあります。納品後、一定期間をおいて様子を伺うメールやレビューをお願いするメールなどを、割引クーポンなどの御礼を添えて送るのもリピート購入につながりやすいアフターフォロー施策です。

ただし、過剰なフォローメールは逆効果となることもあるため注意が必要です。適度なアクションを心がけましょう。

以上がアパレルECサイトの運営においての主たる業務になりまが、この他にも下記のような業務があります。企業によっては担当分野を分けて運営にあたります。

・売上管理、コスト管理
・PV数、セッション数などの数値分析
・ページ追加や修正などのサイトメンテナンス

 

まずはフリマサイトで実践してみる

アパレルECサイトの運営の経験がまったくないのであれば、まずはメルカリ楽天ラクマヤフオク!などのフリマサイトやオークションサイトを利用してみるのもおすすめです。

なぜなら、ユーザーに魅力を感じさせる商品写真の撮り方や説明文の書き方、割引の実施、またユーザーとの質疑応答、さらには梱包や発送など、ECサイトの運営において行う基本的な業務を実践することができるからです。

無料で利用できるので、まずはこのようなフリマサイトで個人間取引を行って、ECサイト運営の流れをつかんでみましょう。

まとめ

ECサイトの運営には多くの業務があり、求められるスキルも多岐にわたりますが、特にアパレルECにおいては、作業スキル以外にもコンセプトや世界観の創出、トレンドの把握といった感性の部分も重要になります。

ECサイトの運営は、運営負担が大きすぎて利益を削らないためにも、常に効率化を意識する必要があります。そのため、ECサイト構築の際は、ASPカートシステムやパッケージ・フルスクラッチなどの選択肢の中から、特にバックエンド業務におけるサポート機能が充実したシステムを導入すべきでしょう。

もし、これからアパレルECサイトを開設しようとしているのであれば、フロントおよびバックエンドの機能を豊富に備えたインターファクトリーの「ebisumart zero(エビスマート ゼロ)」をご検討ください。

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