「D2Cの事業展開を行いたい」
「アパレルのD2Cを実施するにはどうすればいいのか?」
このように考えている事業者の方も多いと思います。
D2C(DtoC)とは「Direct to Consumer」の略称であり、メーカーがECサイトで直接ユーザーに自社商品を販売するビジネスモデルのことです。ユーザーへ商品を直接販売することで、卸や代理店などへの中間マージンが発生しないため利益率が高くなることがメリットですが、アパレルブランドがD2Cを実施する場合、ブランドにとって大事な世界観を伝えやすいという点も大きなメリットです。
しかし、D2Cは自社ですべてを担う分、やるべきことも多岐にわたるため、成功させることはそう容易ではありません。
本日は、forUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、アパレル業界のD2Cについて詳しく解説します。
アパレルECでD2Cを実施するメリット
冒頭に述べた通り、D2Cのメリットは、メーカー(ブランド)が自社で製造から販売までを一貫して行うため、中間マージンが発生しないことで利益率が高くなる点にあります。
そして、アパレルブランドがD2Cを実施する場合、下記の2点において大きなメリットがあります。
メリット① ブランドの世界観を伝えやすい
自社ECサイトで直接商品の販売やプロモーションも行うD2Cでは、ブランドの世界観をコントロールしやすいといったメリットがあります。
自社ECサイトやSNSをはじめ、各種プロモーションで世界観を統一することで、ブランドコンセプトや商品の魅力が率直にユーザーに伝わりやすくなります。
しっかりと統一感のある世界観を構築できれば、その世界観に共感するユーザーはファンとなり、継続的な売上につながっていきます。
メリット② ユーザーとの関係値の構築
自社とユーザーとの間に、業者やショッピングモールサイトなどを介さない分、ユーザーとの距離が近づくのもD2Cの特徴です。
特に昨今では、多くのアパレルブランドがSNSを通じてユーザーと積極的にコミュニケーションを取っております。D2Cにより、消費者とのタッチポイントが増えることで、ブランドを身近に感じてもらいやすく、良好な関係値を構築することにつながるのです。
このような関係値を築くことができると、ユーザーの声やデータも収集しやすく、ユーザーニーズに沿った商品開発や、商品の改善もしやすくなるといった利点も出てきます。
デメリットはすぐに結果が出ないこと
D2Cは、ブランドを認知してもらいブランド力を高めていくことが施策の要点となります。そのためのマーケティング戦略を立て、地道にファンを増やすためのプロモーションを行っていくため、必然的に中長期的な戦略となります。
多くの企業では、楽天やAmazon、ZOZOTOWNのような集客力があるわけではなく、ファンは一朝一夕で増えるものでもないため、少しずつブランドや商品の魅力をユーザーに伝えていく必要があり、D2Cでは一定の効果が現れるまでに時間がかかることがデメリットとなります。
アパレルD2Cを成功させるためのポイント
それでは、アパレルブランドがD2Cを実施するにあたっての重要なポイントについて解説します。
① ターゲットを明確にする
多くのマーケティング施策に共通する要点になりますが、まずは自社ブランドのターゲットを設定します。ターゲットを絞ることで、より費用対効果が高く、ユーザーに届きやすい戦略を打つことができます。
自社のブランドをどんなユーザーに着てほしいかを考え、性別、年齢、価値観、趣味嗜好など、かなり解像度の高いところまで絞ってターゲット像を明確にすることで、精度の高い効果的なマーケティング戦略が可能になります。
② ブランドコンセプトと世界観の確立
D2Cの大きなメリットはコンセプトや世界観をユーザーに伝えやすいことです。そのため、ユーザーに伝えるべきブランドコンセプトは、明確で分かりやすいものであるべきです。「この商品は自分のような人間に向けて作られているものだ」ということがユーザーにダイレクトに伝われば、ユーザーは少なからずその商品が気になってくるはずです。
そして、そのコンセプトに基づいた世界観で、ECサイトやSNS、あるいは配送用の梱包箱なども含めて「演出」することで、ユーザーをブランドの世界観に招待します。その世界観に共感したユーザーがファンとなり、リピーターとして継続的な売上をもたらしてくれます。
今や、消費者の意識は「モノ消費」から「コト消費」に移り、商品そのものよりも購入体験に価値を置いた消費行動が主流になっている中で、世界観を確立してユーザーをいかに魅了するかが非常に重要になってきます。
③ SNSの活用
D2Cの成功のためにSNSは欠かせないツールです。特にアパレル業界においては、SNSこそがファッション情報収集のメインツールになっているため、積極的にSNSを活用してブランドの認知を広げていかなければなりません。下記は、若者マーケティング研究機関「SHIBUYA109 lab.」による、15~24歳のZ世代を対象にした調査結果です。
◆購入時の検索方法と購入検討における検索方法
引用(グラフ):【Z世代のファッション意識】Instagramは情報収集&検索で1位、通販サイトは検索ツールとしても活用する(ネットショップ担当者フォーラム)
このグラフを見ると、若者世代が普段ファッション情報を検索したり、購入時に検索する方法として、InstagramをはじめとしたSNSをメインに利用することが多いことが分かります。
そして、D2Cではいかにユーザーとの接点を持つかが重要なポイントになります。そのため、SNSは自社の情報を一方的に発信するだけのツールとしてではなく、ユーザーと双方向のコミュニケーションを取るためのツールとして活用する必要があります。
Instagramは、ショッピング機能も備えているためECサイトへの導線設計もしやすく、販売チャネルの一つとして利用することも可能ですが、それよりも企業とユーザーを同じ目線でつなぐツールとして、新商品に対するユーザーの意見を募ったり、コーディネートへの質問や相談に気軽に答えられたりするようなコンテンツであった方が、自社のファン醸成につながり、長期的な利益になると筆者は考えます。
④ 物流の最適化
D2Cは、製造から販売まで自社で行うため多くの業務がありますが、物流周りも大切な業務として忘れてはいけません。自社内で対応する場合、アウトソーシングの場合、どちらの場合も、ある程度多くのリソースが割かれることを覚悟しておく必要があります。
物流に関して、まず何よりも大事なことは「スピード感」です。特にECサイトでの購入は、ユーザーとしては購入ボタンを押した瞬間から「待たされる状態」になりますから、可能な限り迅速に商品を発送して、ユーザーの好感度を上げることが重要です。そのための物流体制の見直しや改善を図り、業務効率化を常に意識しておく必要があります。
また、D2Cでは梱包もブランドのイメージに直結する部分なので注意が必要です。大手ECサイトの梱包箱のように、コストがかかったとしても、ロゴなど装飾を施してしっかりと世界観を作ることで、「配送用の箱にまで気を遣っているんだ」と、良い形でユーザーの印象にも残りやすくなります。
⑤ Webマーケティングの知識をつける
D2Cでは、さまざまなマーケティングも自社で行います。そのため、Webマーケティングの知識も必須となります。
実は、D2Cにおいてネックとなるのは、このWebマーケティング、いわゆる集客の部分になります。D2Cは集客が簡単ではないため、思うように売上が伸びずに撤退してしまうという企業も少なくはありません。
Webマーケティングには実に多くの方法がありますが、まずはそれぞれのマーケティング戦略がもたらす効果や意味合いを理解した上で、自社の現状に見合った方法を選んで実践していくことが重要になります。
◆Webマーケティングの一例
・SEO対策
・コンテンツマーケティング
・SNSマーケティング
・Web接客
・メールマーケティング など
まずは、アパレルに親和性の高い施策から優先して実施していくのも良いでしょう。先に述べたSNSマーケティングや、Web接客も多くのアパレルブランドが取り入れており、売上を伸ばすのに効果的な施策です。
アパレルD2Cブランド3社の成功事例
ここでは、アパレルのD2Cブランドの成功事例として3社を紹介いたします。
① anuans(アニュアンス)
参考:アニュアンス
アニュアンスは、もともとInstagramで20万人以上のフォロワーを抱える人気インフルエンサーである中村麻美氏がクリエイティブ・ディレクターを務めるレディースアパレルブランドです。
2021年1月にスタートしたブランドですが、初日には9,200万円という驚異的な売上を記録しました。人気インフルエンサーの場合、すでにSNSマーケティングが成功している状態で、抱えているフォロワーの数が、ECサイトにとってはそのまま顧客となりやすいため、D2Cでも非常に成功しやすいパターンと言えます。
② COHINA(コヒナ)
参考:COHINA
コヒナは、身長155cm以下の小柄な女性を対象としたブランドで、洋服一つ一つの細かい作りのすべてにおいて、小柄な女性が着用しても綺麗にかわいく見える工夫が施されています。
コヒナでは、毎日欠かさずインスタライブを配信しており、常にユーザーとの丁寧なコミュニケーションを取り続けることで、今ではInstagramのフォロワー数は23万人を超え、2018年1月のスタートから3年で、月商も1億円を超えております。
絞り込んだターゲットと、ターゲット層に向けての徹底したInstagramマーケティングにより、成功を収めたD2C事例です。
③ FABRIC TOKYO
参考:FABRIC TOKYO
FABRIC TOKYOは、メンズ向けのシャツやスーツのオーダーメイドブランドで、商品を販売しない「ショールーム店舗」で採寸し、その採寸情報をもとにECサイト上でシャツやスーツをオーダーメイドできる仕組みになっています。
同ブランドでは、創業当初からオーダースーツを3万円台~という安さで提供しております。これはD2Cによる中間マージンのカットにより実現できた安価ですが、「コンビニに入るような気軽さでオーダーメイドを体験してもらいたい」という熱意があってこそのサービスです。
まだブランド力が弱い会社がD2Cを成功させるためには、「熱意」や「商品に対する想い」を持って、商品を売るためにさまざまな施策を実施する覚悟が必要になります。
D2Cは商品を売るための自信と熱意を持って取り組むことが重要
D2Cは、ブランドの世界観をコントロールしやすいため、アパレルECに相性の良いビジネスモデルと言えます。しかし、それだけにブランド力や商品の魅力が問われますし、さまざまなWebマーケティング施策も実施していかなければならず、成功させるのは簡単なことではありません。
そのため、すぐに結果を求めずに、自社のブランドや商品に自信と熱意を持って、商品を売るためにさまざまな施策に挑戦するといった覚悟を持って取り組んでいくことが重要です。
もしこれからD2Cの実施を検討しているアパレル事業者の方は、インターファクトリーのクラウドコマースプラットフォーム「ebisumart zero(エビスマート ゼロ)」の導入もご検討ください。将来的なカスタマイズを視野に入れながら、まずは費用を抑えてスモールスタートしたいという事業者にはおすすめのECプラットフォームです。
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