今やECサイトは特別なノウハウがなくても構築できるようになり、D2Cのビジネスモデルを始めるハードルも下がってきています。しかし、ブランド力がまだ強くない企業では、いかにD2CのECサイトに集客するかが重要となります。
この記事では効果的なD2Cマーケティング戦略として3つの方法を紹介しますが、いずれの方法でも、ブランドの世界観を演出しファンを作ることが最も重要となってきます。
本日は、forUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、D2Cで実践すべき基本的なマーケティング戦略について詳しく解説します。
D2Cにおける基本的な3つのWebマーケティング戦略
まずは、ブランドをゼロから立ち上げようとするD2C企業においては、以下の3つのWebマーケティング戦略が基本となります。
◆3つのWebマーケティング戦略
②インフルエンサーマーケティング
③コンテンツマーケティングによるSEO施策
この中で、Webマーケティング初心者でも実施しやすいのは「①Instagram等のSNS施策」となります。特にアパレルや家具、美容などの分野においては、写真や動画を投稿するInstagramは非常に相性の良い方法と言えます。
「②インフルエンサーマーケティング」は、費用がかかりますが即効性が高いため、自社ブランドと親和性の高いインフルエンサーとパートナーシップを組むことができるなら、ブランド立ち上げ時などの認知度向上が期待できます。
「③コンテンツマーケティングによるSEO施策」は、効果は高いのですが、作業負荷の大きさと効果が出るまでに時間がかかることがデメリットです。
それでは、一つずつ解説します。
①Instagram等のSNS施策
いわゆる〝映える〟分野であるアパレル、家具、美容、飲食といった分野においてD2Cブランドを立ち上げる場合、Instagramを使ったマーケティングは、最も実施しやすい方法です。
◆Instagramを使ったマーケティングが実施しやすい理由
・ユーザーの興味を引く写真や動画を用意できればフォロワーを増やしやすい
・参考になるアカウントが豊富にある
Instagramを使ってD2Cのマーケティングを実施する場合は、とにかく写真のクオリティーと世界観の統一に気を遣い、投稿を通して自社ブランドのファンを増やすことを目指しましょう。「いいね」を集めることを優先すると、投稿の世界観がバラバラになってしまいがちです。自社ブランドの世界観で統一された投稿を心掛け、自社ブランドを好きになってくれるファンに寄り添った投稿を行うことが重要です。
以下の画像は、世界観が統一された投稿をしている企業Instagramの例です。このように明確なコンセプトに基づいた投稿を行うことで、ブランドの世界観を創出することが可能になります。
◆大手メーカーのInstagramタイムライン
画像引用:SHISEIDO(@shiseido)
◆ユーザーがアカウントをフォローする流れ
②アカウントのホームをタップして過去投稿を見る
③世界観が気に入り、フォローする
投稿のタイミングや、タグ付けのやり方は、まず自社ブランドと同じ業界のアカウントを参考にしてみましょう。また、素材を選ぶ際にも、同業界のアカウントで反響の高かった投稿を参考にすると良いでしょう。
BtoBなどの分野は、TwitterやFacebookの運用も検討する
ここまで説明してきたアパレル分野などと異なり、BtoBなどの分野は写真で自社ブランドの世界観を伝えるにはあまり向いていません。その場合にはInstagramではなく、TwitterやFacebookの運用を検討してみましょう。Instagramに比べると、フォロワーを増やす難易度は高くなりますが、D2Cブランドの場合は、エンドユーザーとコミュニケーションを行うためのチャネル作りは非常に重要です。
TwitterやFacebookアカウントで投稿を行う際は、「お役立ち情報」の発信を意識してみてください。例えば健康食品のD2Cブランドの場合は、日常生活で使える健康についての自社ノウハウの投稿などが考えられます。
お役立ち情報を投稿することで、一気にフォロワーが増えることはないかもしれませんが、その情報を必要とするユーザーが自社のアカウントを見つけてくれるキッカケにはなります。
下の表を見ても分かる通り、Twitterと比べて、Facebookは30代後半から50代がよく利用するSNSなので、購買力の強いターゲット層が利用していると言えます。Facebookのメリットは投稿できる文字数が多いので、ブログのような長文が投稿可能なことと、他のSNSと比較して実名での利用者が多く、ファンとの結び付きが強くなる点が挙げられます。またFacebookメッセンジャーボットにはコメントの自動返信ができる機能がついており、ユーザーからのコメントに返信するチャットボットとして利用することも可能です。
◆【令和2年度】主なソーシャルメディア系サービス/アプリ等の利用率
画像引用:総務省「令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」
②インフルエンサーマーケティング
「①Instagram等のSNS施策」を解説しましたが、Instagramは比較的実施しやすい方法とはいえ、ある程度は時間と労力をかけて取り組まないと、フォロワーはなかなか増えるものではありません。しかし、D2Cブランド開設当初においては、インフルエンサーとパートナーシップを組むことで一気に初期の認知度を向上させることができます。
インフルエンサーマーケティングの市場は年々拡大しており、2025年には723億円規模に達する見込みという調査結果も出ています。今後もより販売チャネルとしての重要性が大きくなっていくのは間違いありません。
◆インフルエンサーマーケティングの市場規模推計・予測 2018年-2025年
画像引用:2020年のソーシャルメディアマーケティング市場は5,519億円、前年比107%の見通し 2025年には2020年比約2倍、1兆1,171億円規模に(Digital InFact)
自社D2Cブランドと親和性が高いインフルエンサーをピックアップし、個別に連絡を取って依頼します。多くのインフルエンサーとネットワークを持つキャスティング会社に問い合わせる方法もありますが、筆者は自社で調査し、声をかけてみるべきだと考えます。
インフルエンサーのSNSアカウントから個別に連絡を取ることができるので、わざわざキャスティング会社に費用を支払う必要がないからです。
インフルエンサーマーケティングのデメリットは、長期施策には向いていないことです。当初はカンタンに認知度を向上させることができるため、費用対効果が高いと思われるのですが、繰り返しインフルエンサーに拡散を依頼しても徐々に効果が薄まり、費用だけが高くなってしまうのです。
インフルエンサーマーケティングは、あくまでD2Cブランドの立ち上げ時のスタートダッシュを成功させるためと考えて、自社SNSアカウントによるフォロワーを増やすことなど、中長期的には自社で行うマーケティング施策をベースにするようにしましょう。
また、インフルエンサーマーケティングを実施する際は、SNSを利用することになるため「炎上リスク」があることも理解しておく必要があります。「炎上商法」という言葉もありますが、やはり炎上してしまうと、企業やブランドの信用が一気に失墜してしまう可能性が高いので、インフルエンサーのリテラシー等にも注意を払い、実施の際にはしっかりと企業側の意図を伝えた上で実施するようにしましょう。
③コンテンツマーケティングによるSEO施策
コンテンツマーケティングとは、ブログ記事や動画などのコンテンツを作り、SEOやYouTube(※)などでアクセスするユーザーを増やしつつ、ファンを増やすマーケティング施策のことです。
※YouTubeは一般的にSNSにカテゴライズされますが、当記事においてはコンテンツマーケティングの施策として解説します。
「①Instagram等のSNS施策」と比べたメリットは、SEOやYouTube上で一度集客に成功すると、その後は新しいコンテンツを投稿しなくても、定期的にアクセス数(視聴数)がある状態を作り出せることです。そのため、コンテンツを相当数作成してしまえば、何もしなくても一定のアクセスを得られ、まさに集客の自動化を行うことができる点にあります。
しかし、ブログ記事の場合、月間10万PV以上のアクセス数を作り上げることは容易ではなく、独自のSEOのノウハウが必要となります(YouTubeの場合は、チャンネル登録者数を増やすためのノウハウなど)。
なので、この施策にはブランド立ち上げ当初から、ノウハウの習得と実践に時間をかけた上で長期的に取り組んでいかなくてはなりません。その分、効果が表れてからは安定的な成果が期待できます。
自社の世界観を演出してファン(=リピーター)を作ることが大切
ここまで、D2Cで基本となる3つのマーケティング戦略を解説してきました。
◆3つのWebマーケティング戦略
②インフルエンサーマーケティング
③コンテンツマーケティングによるSEO施策
これまでの解説の通り、D2Cにおけるマーケティングは、施策の軸をSNSに据えて実施することが基本となります。なぜなら、SNSはユーザーのリアルな反応やデータを集めやすく、SNSを通じて顧客がファンになりやすいという特長があるからです。
①~③、いずれのチャネルでマーケティングを行う場合も、D2Cブランドには「世界観」が非常に重要です。なぜなら、ファンはブランドの世界観に共感して商品を購入したり、SNSをフォローしたりするからです。そのためには世界観の骨子となる、自社のブランドを明確に規定しましょう。
世界観に共感し魅了された顧客がブランドの固定ファン(=リピーター)となり、彼らがまた新たなファン(=顧客)を呼ぶことで、安定的な売上へとつながっていくはずです。