ECサイトを運営していく中で、新規ユーザー対策とともに、既存ユーザーに対しても購入を促すCRM施策は、非常に重要です。
ECサイトにおいてCRM施策を実施するなら、まずはぜひ筆者のおすすめする5つのCRM施策を参考にしてみてください。いずれも、実際に筆者が体験してきた結果であり、ツールに依存する施策ではないからです。
本日は、forUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、ECサイトにおけるCRMについて詳しく解説します。
ECサイトにおける5つのCRM施策
それでは、ECサイトで行うべき5つのCRM施策を紹介するので、もし実施可能な施策があれば、実際のECサイト運営の参考にしてみてください。
◆5つのCRM施策
CRM施策① 優良顧客のためのロイヤリティ施策
CRM施策② F2転換施策
CRM施策③ セグメント施策
CRM施策④ ユーザーの不満に対する先回り施策「解約ページの作りこみ」
CRM施策⑤ リアルイベントの開催
CRM施策① 優良顧客のためのロイヤリティ施策
有名なパレートの法則によると、2割の顧客が売上の8割を作っていると言われております。そこで、ロイヤリティ施策においては、この2割の優良顧客に特化した施策を行います。例えば、以下のような件名のメールを送ります。
◆優良顧客に向けたメール件名の例
このようにお得意様(優良顧客)に対して、特典を付与することで、さらにECサイトのリピート購入を促します。実際に筆者もロイヤリティ施策を実施したことがあり、当時所属していた会社では、お得意様に3万円相当のクーポンを配ったところ、年間での売上が大きく増えた経験があります。
このように優良顧客に対して、特別なオファーを出すのは効果が高いので是非検討してみてください。
CRM施策② F2転換施策
初回購入してくれたユーザーに対して、商品が届いてECサイトの印象がユーザーの頭に残っている間に、次の商品購入を促す(F2転換)施策を実施します。例えば、以下のような施策です。
◆F2転換施策の例
② SNSのフォローを依頼するメールを送る
③ F2転換を訴求するためのクーポンやポイントを付与
新規ユーザーにこのようなメールを送付することで、ECサイトでの2回目以降の買い物を訴求します。
新規顧客獲得には、広告を使っている場合は1回の購入だけでは利益が出ない場合がありますので、2回目以降の買い物を訴求する工夫を行うのは非常に大切です。また、総合通販はサプリや化粧品などの商材を扱う単品通販と違い、2回目の買い物を行ってもらうには、商品力がポイントになってくるため、F2転換率を意識することは非常に重要です。
CRM施策③ セグメント施策
例えば、特定の商品を買った人にだけ特別なオファーを提供したり、あるいは休眠顧客に対して、クーポンやポイントを訴求して、再度購入を促したりするなどの施策です。ポイントは、以下の3つです。
② どのようなオファーを
③ どのような件名(メール)で
まず、特定のセグメントを切ることで、そのセグメントユーザーにとって魅力的なオファーを考えやすくなります。例えば、アパレルECにおいて、過去に特定メーカーのスニーカーを複数回購入したユーザーには、そのメーカーの商品を訴求することで開封率が高くなります。
そして、重要なのはメールの件名です。特定のセグメントに、魅力的なオファーを用意できたとしても、それが伝わらなければ意味がありません。そうならないためにもオファー内容やセグメント名を以下の例のようにメールの件名に含めるなどして、メールを受け取ったユーザーに魅力を伝える工夫が必要です。
◆メール件名の例
×悪い例
「春の新製品のお知らせ!○○ネットショップ」
○良い例
「○○をご購入された方へ!○○の2023年モデルを限定入荷|○○ネットショップ」
このように、特定のセグメントに対してオファーを紹介するCRM施策ですが、デメリットもあります。それはセグメントを絞り過ぎると、メール配信の母数が少なくなり効果が出にくくなってしまうことです。この施策を実施する場合は、最低でも100件以上の配信先に実施しましょう。
CRM施策④ ユーザーの不満に対する先回り施策「解約ページの作り込み」
メール配信ばかりがCRM施策ではありません。もしD2Cで定期販売やサブスクリプションビジネスを実施している場合、解約を阻止するのもCRM施策の一環です。解約を検討するユーザーは、Google検索で以下のような検索を行うことが多いと考えられます。
◆解約を検討しているユーザーがGoogle検索するキーワード
サブスクリプションサービスで世界的に有名な「Netflix」も、カタカナ入力すると、Googleから以下のようなサジェスト(入力補助)が出てくるほどです。
◆Google検索で「ネットフリックス」と入力した場合
つまり、定期購入やサブスクリプションサービスには、一定数解約を考えているユーザーがいます。そのようなユーザーに対して、解約ページを作り込むことで解約防止施策を行います。
Q&Aを用意したり、あるいは他のサービスを紹介するなど、解約阻止に向けての訴求を行います。
しかし、解約ページなどを分かりにくくしてはいけません。解約ページが分かりにくいと、ユーザーはそのようなサービスに再度加入したいと思いませんし、SNSなどで悪い口コミも広がりやすいため、CRMからかけ離れたものになってしまいます。
CRM施策⑤ リアルイベントの開催
今までは、ツールやWebマーケティング施策を使ったCRM施策を紹介してきましたが、実際にイベントを開催し、ユーザーとスタッフ、あるいはユーザー同士が交流する機会を設けることで、ECサイトやブランドに対してエンゲージメントが飛躍的に高まります。
筆者の経験ですが、昔所属した会社でオンライン教材をECサイトで販売していたことがありました。そのときクリスマスイベントを東京で実施したところ、遠方からもユーザーが参加され、大変満足されていたことが今でも忘れられません。
もちろん、オンラインイベントでも良いのですが、やはりオンラインよりもリアルイベントの方が「希少度」を高めやすいためエンゲージメントが高くなるのです。コロナ禍も過ぎ去ろうとしており、このようなイベントを企画しても良い時期なのではないでしょうか。
ECサイトでCRMを実施するには3つの機能が必要
次に、CRMを実施するためのECサイトの機能を紹介します。
機能① 顧客管理機能
まず必要なのが、顧客管理機能です。ECサイトの規模が大きくなるにつれ、ユーザーの数も多くなってきます。注文数が少ないうちは、EC担当者の頭の中で誰がリピーターか把握ができているものですが、注文数が1日に100件を超えるようになると、EC担当者の頭の中だけでは管理できません。
そのため、会員情報とひも付いた顧客管理機能がECサイトに必要となります。顧客管理機能には、会員ごとの注文履歴が残っており、特別なやり取りをした場合は、対応履歴についてメモを書くことができます。メモが残っていることで、特定のEC担当者ではなく、チームで顧客管理をすることができます。
機能② メルマガ機能
ユーザーとやり取りをする上でメールによるコミュニケーションは欠かせません。そのため、過去に購入してくれたユーザーや会員登録してくれたユーザーに対して、メルマガを送付してコミュニケーションをとります。
メルマガには、一斉送信する以外に以下のような種類があります。
◆メルマガの種類
② One to One メール
③ ステップメール
④ シナリオメール
これらのメールについて、一つずつ解説します。
① セグメントメール
セグメントメールは、例えば「累積購入金額10,000円以上で、購入回数が3回以上」などのセグメントを切って、対象者のみにメールを送る方法です。優良顧客を優遇して、ロイヤリティを高めたり、あるいは休眠顧客に再度、購入を促すために利用するメールです。
② One to One メール
件名や宛名にユーザー名を入れて、自分一人だけにメールがきたように見せるメール手法です。通常のメールよりも、開封率が高いことが特徴です。ユーザーの購入履歴に合わせて、メールの内容を変更することもできます。
③ ステップメール
例えば、初めて購入した新規ユーザーに対して、一定間隔で決まった内容のメールを送付します。
2通目:アンケートの案内
3通目:他のユーザーの声の紹介
4通目:他の商品の訴求
このように設定をしておけば自動的にメールが送付されます。メールを受け取った人の中には、レビューを書いてくれたり、ECサイトに再訪して再購入してくれるユーザーが現れます。
④ シナリオメール
シナリオメールは、例えば最初に送付したメールを開封したユーザーと開封していないユーザーを分けて考えて、開封したユーザー向けと、開封していないユーザー向けにそれぞれ別のメールを出すなど、シナリオを作って、そのシナリオをもとにメールを自動的に送付するものです。
ステップメールやOne to One メールとしても利用されるので、厳密に分けて考える必要はありません。
機能③ クーポン、ポイント機能
特定のユーザーにクーポンやポイントを付与する機能です。多くのECプラットフォームに実装されている機能で、特定のユーザーに特典を与えるのに便利な機能です。クーポンとポイントの違いは、「クーポン」は貯めることができませんが、「ポイント」は貯めることができるので、お金に近いのが「ポイント」となります。
そのためクーポンの方が利益の圧迫が小さいと言えます。クーポンもポイントも有効期限を設けることができるので、特にクーポンはしっかり期限をコントロールしましょう。
CRM施策では厳密なKPIを設定すると上手くいかないことも
マーケティングにおいては、KPIを設定して、その数値を注視していくことは大切ではありますが、ECサイトのCRM施策においては、KPIを重視しすぎると上手く機能しません。なぜなら、CRM施策によって得られるF2転換率、あるいは解約率の減少などは、中長期的なスパンでなければなかなか効果が出てこないからです。
施策ごとにF2転換率の推移や解約率の推移を、数か月のスパンだけで計測すると、「効果がないため施策を中止する」という結果につながりかねません。
✓KPI管理は最低でも3か月以上のスパンで経過を見る
✓ユーザーのためになっているなら、良しとして続けていくこと
そのため、CRM施策においては「ざっくり」とKPI管理を行い、まずはユーザーのためになっているのであれば、続けていくという考え方が重要です。
CRMに必要なのは「ツール」ではなく「ユーザーと向き合う覚悟」
CRMをECサイト運営に取り入れるとなると、ツールから検討する人が多いと思いますが、有名なCRMツールを入れたからといって、リピート購入が増えて売上が伸びるわけではありません。
まず、CRM施策を実施すると考えるのなら、ユーザーとしっかり向き合うことが大切です。例えば、ユーザーからクレームがあったときも、テンプレート文をコピペしてユーザーに送るだけのような機械的な対応ではなく、とことんクレームの内容を聞いた上で謝罪すべきところは謝罪し、人間味のある返答をすべきです。
そのような気持ちの入った返答をすることもCRM施策の一種であり、クレームがきっかけでリピーターになったという話も数多くあります。まずは、ツールよりもユーザーと向き合う覚悟を持つことから始めましょう。
もし、これからネットショップを開設しようとしている方、あるいは現在のカートシステムでうまく売り上げが伸びずにお悩みの方は、機能が豊富で将来的なカスタマイズやシステム連携も可能な、インターファクトリーのebisumart zero(エビスマート ゼロ)をご検討ください。
本記事で解説した、CRMに必要な顧客管理機能やメルマガ機能も備えており、その他ECサイトで売上を伸ばす施策に役立つ機能が豊富ですので、詳しくは下記の公式ホームページをぜひご覧ください。