ネット利用率98%!デジタル先進国の韓国EC市場の特徴

韓国のEC市場は、世界的水準から見ても急速な拡大傾向にある市場です。2022年現在において最新の市場規模は公表されておりませんが、経済産業省が2021年7月に発表したレポート(※)によると、2020年はおよそ1,106億USドル(約11兆7,236億円)でした。前年の市場規模が871億USドルだったので、1年間で大きく拡大したことになります。

※参考:令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)報告書(経済産業省)

韓国は政府主導のもと、早くからインフラが整備され、IT化が推進されてきたデジタル大国です。今では日本でも多くのユーザーが利用しているLINEも韓国企業が発祥ということからも、その技術力やデジタルコンテンツの開発力の高さが読み取れます。

国民のインターネット利用率も98%と非常に高いため、必然的にEC市場の規模も年々拡大傾向にあります。こういった土壌の中で急激に成長してきた韓国EC市場はどのような特徴を持っているのでしょうか。

本日は、forUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、独自の発展を遂げてきた韓国ECの特徴について解説します。

世界における韓国EC市場

まずは、世界のEC市場における韓国の立ち位置を見てみましょう。下記は、2021年の全世界における各国のBtoC-EC市場が占める割合を表したグラフです。

◆国別EC市場シェア(2021年)

国別のEC市場シェア

出典:令和3年度 電子商取引に関する市場調査報告書(経済産業省)

韓国のEC市場は世界5位であり、市場シェアは2.5%です。中国・アメリカの市場規模が抜きん出ていますが、3位以降はそれほど差は開いておらず、韓国ECも3位になるポテンシャルを持っております。

なぜなら韓国は、世界でもトップクラスのインターネット先進国であり、EC化率も非常に高い国であるからです。

韓国ECの市場規模とEC化率

冒頭に述べた通り、2020年の韓国のBtoC-EC市場規模は1,106億USドルで、日本円にして約11兆7,236億円(※)でした。前年の871億USドルから大きく市場規模を拡大しており、インターネット利用者のEC利用率も6割を超えております

※2020年の年間平均レート106円換算

日本貿易振興機構(ジェトロ)のレポートによると、2021年の韓国のEC化率は29.0%で、同年の世界のEC化率19.6%を10%近く上回った非常に高い数字となっております。

参考:海外市場の成長がECの積極的活用を後押し(世界、日本)(日本貿易振興機構)

このようにEC化率が高い韓国には、以下のような背景があります。

インターネットの普及率が98%

もともと韓国は早くからインフラが整備されており、インターネットの利用率も非常に高く、総人口5,132万人に対するインターネットユーザー数は5,029万人(2022年1月時点)で、普及率は実に98%全年齢で高い利用率を持っております。

引用:DIGITAL 2022: SOUTH KOREA

下のグラフは、2008年と2018年のインターネット利用率の比較です。

◆韓国の年齢別インターネット利用率(2008年と2018年の比較)

韓国年齢別インターネット利用率比較

出典:韓国における電子商取引(EC)市場調査(日本貿易振興機構)より筆者作成

これを見ると、2008年の時点で、すでに10代〜30代の若年層におけるインターネット利用率はほぼ100%に近い数値でしたが、そこから10年の間で40代以降、特に60代以上のインターネット利用が一気に増えているのが分かります。

このように、早くからデジタルの土壌が醸成されており、近年で幅広い層に普及したことでより盤石なものとなったのです。

韓国政府によるデジタル推進がECの普及を後押し

韓国政府は、インフラの整備を強化し、IT産業を育成することに力を入れてきました。また、1997年のアジア通貨危機からの打開策として、クレジットカード決済促進策の実施や、QRコードを用いた決済手段「ゼロペイ」 を普及させようとするなど、政府主導でキャッシュレス化の取り組みを行ってきました。

これによりオンライン決済システムが急速に発達し、それとともにEC事業が活性化したことでEC利用者も右肩上がりに増加することになりました。

このように、政府主導でデジタル化を推進してきたことで一気に市場が拡大し、短期間のうちにEC先進国と呼べる高いEC化率に至ったのです。

韓国EC市場の特徴

インターネットの普及率が世界トップクラスの韓国は、昨今では重要なEC市場として注目されておりますが、韓国のEC市場は独自の発展を遂げてきました。

市場を形成する2種類のECサイト

韓国EC市場には、大きく分けて2種類のECサイトがあります。一つは大手企業が運営する「総合型ショッピングモールサイト」、そしてもう一つは個人運営も多い「専門型ショッピングサイト」です。

まず、ショッピングモールですが、代表的なサイトは以下の5サイトです。

① Gmarket

Gmarketは、韓国最大のショッピングモールサイトです。月間訪問者数2,200万人を誇り、世界中で利用されている大規模ECサイトです。基本的にはショッピングモールですが、オンラインオークションも行っております。韓国語・英語・中国語に対応しております。

g-market

参考:Gmarket

② 11番街

11番街(11st)も韓国で非常に知名度が高い大型ショッピングモールサイトです。トルコ、マレーシア、インドネシアなどでも利用されており、ショッピングの際には希望の通貨を選択することができます。モールの出店審査が厳しい韓国では珍しく審査がないのも特徴です。

11st

参考:11番街

③ TMON

食品、日用品、衣料品、化粧品から旅行パックやスポーツアクティビティの予約まで、幅広い商品を取り扱っており、2010年のサービス開始から急激に利用者が増えてきているECサイトです。毎週金曜日は無料配送デーとするなど、定期的に割引セールやクーポン発行があるので、ユーザーが定期的に訪問するECサイトとなっております。

TMON

参考:TMON

④ Auction

1998年にサービスがスタートした、韓国初のオークション型ECサイトです。3,000以上のECサイトを比較して、最安値のものが一番上に表示される仕組みとなっており、日本における「価格.com」のように、比較サイトとしても利用されているサイトです。

Auction

参考:Auction

⑤ coupang

coupangは、アメリカの「Groupon」をベンチマークとして、2013年に開設されました。特徴は「配送スピード」と「決済の容易さ」です。配送はAmazonプライムと同じように、0時までに注文すれば翌日配送対応が可能になります。また、coupangのモバイル決済は暗証番号や生体認証の必要がなく、ワンタップで簡単に決済ができます。

coupang

参考:coupang

これら5サイトが、独自のサービスを強みにして韓国EC市場のけん引役となっております。越境ECにも対応しており、グローバルに人気のあるサイトですが、韓国大手ECの多くは出店審査が非常に厳しく、国外からの参入はハードルが高いといった面があります。

そして、韓国ECのもう一つのマーケットである「専門型ショッピングサイト」は、特にファッション、食品、家具ECが多く、個人経営による小規模サイトを含めて数多くのECサイトが存在しております。

ひと口に「専門型」と言っても、その専門性が非常に高く、男性向けと女性向けといった大きなセグメントから、「30代男性向けフォーマルスーツ専門サイト」「ティーン向けおしゃれ古着専門サイト」のように、細かい属性を持ったECサイトが多いことが特徴です。

ここからは筆者の推測ですが、韓国で人気のあるECサイトは先に紹介したようなショッピングモールサイトですが、出店条件が厳しいこともあり、個人経営者などは必然的に自社ECの運営を選択することになるでしょう。

また、そういった小規模事業者が大手に価格で対抗することはできないため、顧客のニッチなニーズに応える形で差別化を図ることが、有効な対抗手段になるはずです。

こういったことから、現状のような韓国EC市場における二極化が生まれたのではないかと考えられます。

ECサイトごとに独自性のあるサービスを展開

国外から韓国への越境ECのハードルが高いこともあり、韓国EC業界において競合は基本的に国内ECサイトになります。そのためEC各社は独自のサービスを展開しながら、ユーザーの獲得に取り組んでおります

◆独自のサービスの例

・各ECサイト独自のポイント制度
・ECサイト独自の決済システム
・PBの製造

また、coupangでは、Amazonプライムのような翌日配送サービスである「ロケット配送」を提供しております。韓国にAmazonはありませんが、同等のサービスを自国内で実現させております。このように、ある意味閉鎖的とも取れる市場の中で各社しのぎを削ることで、韓国ECは他国と比べて独自の発展を見せてきました。

細かい区分ごとにECサイトが存在

先に述べたように、韓国のEC市場は大きく2種類に分かれていますが、実際には下の表のように運営形態と運営主体によって細かく区分され、区分ごとにさまざまなECサイトが存在しております

◆韓国ECプラットフォームの区分

区分 代表事業者(プラットフォーム)
オープンマーケット Gmarket、Auction、11番街、Interpark
ソーシャルコマース coupang、TMON、wemakeprice
総合モール SSG.COM、emart mall、Hmall、LOTTE.COM、
AKmall、galleria mall
TVショッピング GSshop、CJmall、LOTTEimall、NSmall、
HOME & SHOPPING
プラットフォームコマース NAVER (NAVER Smart Store)、カカオトーク
専門モール Market kurly、Hellonature、10X10、YES24、
fashionplus
BtoB専用 ドメクック、ownerclan

出典:韓国における電子商取引(EC)市場調査(日本貿易振興機構)より筆者作成

このような細かい分類も、韓国ECが独自の発展を遂げた要因の一つと考えられます。

韓国への越境EC参入は簡単ではない

このように、世界トップクラスのEC大国である韓国向けに越境ECを検討している企業も多いと思いますが、韓国大手ECサイトの出店条件はとても厳しく、まず韓国内に店舗や工場がないと出店ができません

特に最大手のGmarketは、そういった厳しい条件に加えて、韓国語・英語・中国語のみの対応という言語的な制約もあるため、モール型の出店は比較的ハードルの低い11番街などから始めてみるべきでしょう。

また、独自のECサイトを開設する場合も注意が必要です。

韓国ではメインで利用されている検索エンジンは「NAVER」になるため、Google向けSEO対策は意味がなく、NAVERユーザー向けのマーケティングを行う必要があります。また一番使われているSNSは「カカオトーク」ですので、SNSマーケティングについてもカカオトークを軸に考えなければいけません。

さらに、先に述べたように、競合となるECサイトは独自のサービスが発展しているので、それらに劣らないサービスを展開していく必要があります。いずれにしても、まずは韓国ECという巨大かつ独特な市場を十分に研究した上で、戦略を立てられるかが重要になってきます。

デジタル先進国としてさらなる躍進が期待されている

韓国はインターネットの利用率において世界トップクラスのデジタル先進国です。早くからインフラも整備されており、5Gサービスも韓国内の約3分の2で利用できるまで普及しております。

参考:韓国が5G最高速のアジア三冠王、Opensignalのベンチマーク結果(日経クロステック)

このように、ECが成長する土壌がすでに高いレベルで醸成されていますので、今後もEC市場がさらに拡大していくことが予想されます。

ただし、独自の進化を遂げてきただけに、結果として韓国ECはある意味で閉鎖的な市場となりつつもあります。このまま他国の競合の参入を許さずに独自の成長を続けていくのか、あるいは韓国からAmazonのような世界トップシェアとなりうるECサービスが生まれるのか、今後の展開が楽しみです。

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