同梱物とは、ネットショップで購入された商品に同封する印刷物や試供品などの品物のことで、主にD2C(消費者直接取引)で取り入れられている施策です。
同梱物には、チラシやパンフレット、試供品など多くの種類があり、開封時にユーザーの目に入りやすいため、効果の高いオフラインマーケティングツールとして、ネットショップの主力施策の一つとなっております。
同梱物施策は、販売促進とともにリピーターが育成されることで、LTV(顧客生涯価値)の向上につながる重要な施策ですが、自社の利益を削って行う施策であるため、常に目的と費用対効果を検証しながら行うことが重要です。
本日は、forUSERS株式会社でコンサルを行っている筆者が、ネットショップにおける同梱物について詳しく解説します。
同梱物施策の目的はLTVの向上
ネットショップにおいて、購入された商品の送付時に同梱物を同封することで、クロスセルや次回購入のきっかけとなります。その結果、リピート購入が促進されリピーターが育成されるため、LTVの向上につながります。
同梱物には、それぞれの役割と目的がありますが、最終的にはLTVの向上こそが同梱物施策全体としての大きな目的となります。
同梱物の3つのメリット
同梱物にはさまざまなメリットがありますが、ここでは3つの大きなメリットについて解説します。
メリット① 開封率が高い
開封率の低いDMやメールマガジンなどと比べると、同梱物は開封率が極めて高く、購入商品の開封時にほぼ確実に目に入るため、100%に近い開封率となります。
そのため、ユーザーとの接点ができやすいといった点で、ネットショップにおいては、この開封率の高さは同梱物の最も大きなメリットと言えます。
メリット② ユーザーのファン化につながる
筆者が、過去に楽天市場のあるショップでスニーカーを購入した際、同梱物としてショップからの手紙が同封されておりました。そこには丁寧なお礼とともに、過去の購入商品にも触れるなど、筆者という個人に向けた感謝のメッセージが書かれてありました。その手紙をもらってからは、スニーカーを購入する際は意図してそのショップを選ぶようになりました。
つまり、筆者がそのショップの「ファン」になったのです。このように、購入者の情報から適切なタイミングと内容で同梱物を送付することで、ユーザーの好感度が上がりやすくなり、優良なリピーターになること(=ファン化)につながります。
メリット③ ユーザーの声を収集できる
同梱物として、顧客アンケートの案内を同封することで、顧客のリアルな声を集めやすくなります。収集したユーザーの意見は、商品開発やサービスの改善に活用できる貴重なデータとなります。
同梱物の種類
ネットショップにおける同梱物にはさまざまな種類がありますが、ここでは代表的な同梱物について解説します。
サンクスレター
商品を購入してくれたユーザーに対しての挨拶状、お礼状です。先ほど筆者があるネットショップのファンになった経緯を述べた通り、そのきっかけはそのショップのサンクスレターでした。
ネットショップでは、ユーザーとの接点がほとんどありません。そんな中で、同梱物はユーザーとコミュニケーションをとることができる数少ないチャンスです。サンクスレターでユーザーにしっかりと感謝の気持ちを伝えることで、ショップに対する好感度が上がるはずです。
使用方法・取扱説明書
購入商品の使用方法や注意点をまとめた印刷物です。商品に取扱説明書がパッケージされている場合も、「より効果的な使用方法」「こんな使い方もあります」など、プラスαとなる使用方法を伝えることで、ユーザーのさらなる満足度の向上につながります。
同梱物としての取扱説明書は、写真やイラストなども交えながら、わかりやすい作りにすることをおすすめします。
ブランドブック
ブランディング戦略のために、ブランドブックを同梱します。会社が持っている理念、商品に込めた思いやコンセプトをまとめた冊子は、その会社の世界観そのものであり、その世界観に共感したユーザーは、ブランドイメージが向上し、ファン化しやすくなります。
このようにブランドブックは、商品が持つ機能的な価値だけでなく、情緒的な価値も付加価値として向上するツールのため、中長期的に会社の利益につながる重要なツールでもあります。
自社商品のパンフレット・チラシ
自社の新製品やおすすめの商品、またはサービスをアピールするために、パンフレットやチラシを使ってユーザーにアピールします。
購入した商品が届いて開封する際、ユーザーは心理的にポジティブな状態にあります。そのため、一般的に避けられがちな広告も好意的に受け入れてもらえる可能性が高いため、他商品への購入にもつながりやすくなります。
また、ユーザーの購入品に関連した商品のパンフレットであれば、クロスセルも狙いやすいはずです。「この商品を購入された方には、こちらもおすすめです」といった文言を添えて、関連性をアピールするようにしましょう。
お客様のレビューや体験談
ネットショップでは、お客様の声は購入の決め手となる大きな要素です。同梱物においてお客様の声の効果が発揮されやすいのは、定期販売商品です。
化粧品や健康食品など、継続して続けることで効果が出るような商品の場合、初回単品で購入したユーザーに対して、継続したことで効果が出たお客様の体験談やレビューをまとめた資料を同梱することで、定期購入につながりやすくなります。
ユーザーアンケートの案内・はがき
ユーザーから意見や要望、またレビューなどを募るため、Webサイトのアンケートページへの案内や、返信用ハガキを同梱します。得られたユーザーの貴重な声は、新商品の開発や既存製品の改善に役立ちますし、レビューや体験談をまとめて、同梱物として活用することもできます。
特典クーポン・お得情報
商品を購入したユーザーは、ポジティブで好意的な心理状態になっている可能性が高いため、自社の他製品にも興味を持ってもらいやすい状態にあります。ここで次回購入に使える割引クーポンやお得情報を提示することで、リピート購入につながりやすくなります。
また、誕生月のユーザーに送る「バースデークーポン」は、特別感や限定感を与えるため、利用してもらいやすくおすすめです。筆者も、好きなブランドから送られてくるバースデー割引は、ほぼ毎年利用させてもらっています。
さらに、クーポンに使用期限を設けることで、購入を迷っているユーザーを後押しすることができます。ただしトラブルを避けるため、使用期限は分かりやすく記載することが大事です。
試供品
商品を実際に手に取ってみたり試すことができないネットショップにおいて、試供品を同梱物にすることで、ユーザーに自社の他商品も知ってもらう大きなチャンスになります。
単におすすめの商品や新商品のサンプルを同梱するよりも、購入商品に関連するものが良いでしょう。例えば、化粧水を購入したのであれば乳液や美容液など、併せて使用することで効果が高まる商品の方が、ユーザーに興味を持ってもらいやすく、購入にもつながりやすくなります。
ちなみに、化粧品メーカーなどでは商品の購入時に、同梱される他商品の試供品を自分で選択することができます。ユーザーが自分で選択する時点で、その商品に興味を持っていることになるので購入の確度は高く、多くの商品をラインナップするメーカーであれば、このような方法もおすすめです。
定期購入の案内
ネットショップにおいて、定期購入は中長期的に安定した売上が見込め、LTVの向上にもつながる重要な販売形態です。そのため、単品購入者へは、必ず定期購入を促す案内状や申込書を同梱しましょう。
初回割引や送料無料など、定期購入によって得られるメリットがあれば、案内状に分かりやすく記載します。また、特に化粧品やサプリなどの健康食品は、継続して続けることで効果が出るものが多いので、定期購入者のレビューも記載することで、より定期購入に引き上げやすくなります。
SNSへの誘導
自社の新しい情報をユーザーにいち早く伝えるためには、即時性が高く、ユーザーに通知が届きやすいSNSを活用することがおすすめです。同梱物に自社のTwitterやInstagramなどのQRコードを記載するなどしてユーザーにフォローを促しましょう。
SNSは、自社の世界観を伝えやすくファンの育成に効果的なマーケティングツールでもあるため、ぜひユーザーにはフォローしてもらいたいところです。そのため、フォロー割引など、フォローすることで得られるメリットを設定し、同梱物に分かりやすく記載することが重要です。
ノベルティグッズ
ノベルティは、自社のブランディングや顧客満足度の向上に利用されるもので、売上には直接つながらない「おまけ」ですが、世界観を演出するツールでもあります。ユーザーのファン化を促し、ファンにとってはノベルティ自体が価値を持つ場合もあります。
例えば、アパレルブランドの「Supreme」では、購入時にノベルティでもらえるステッカーも人気があり、まれに実店舗での購入時にもらえないこともあるため、ステッカーを手に入れるために、ネットショップで購入するユーザーもおります。
このように、ノベルティはファン育成のための重要なマーケティングツールでもあるのです。
なお、ノベルティグッズを同梱する場合は、「景品表示法」が適用されるため注意が必要です。詳しくは、消費者庁のホームページで確認できますので、同梱を検討しているのであれば、あらかじめチェックしておくことをおすすめします。
同梱物施策を行う際の5つのポイント
先に述べたようにメリットの多い同梱物ですが、無作為に同封してしまうと期待した効果が得られないだけでなく、ただコストを消費するだけになってしまう可能性がありますので、以下のポイントに注意しながら、マーケティング的な視点を持って同梱物を選ぶ必要があります。
ポイント① ユーザーごとに適切なタイミングと内容を選ぶ
同梱物は、厳密には初回購入者と2回目以降や定期購入者によって、以下のように目的が異なります。
◆初回購入者への目的(例)
・定期購入への引き上げ
◆2回目以降の購入者もしくは定期購入者への目的(例)
・LTVの向上
そのため、それぞれの目的に応じた同梱物を選ぶ必要があります。2回目以降や定期購入者に初回購入者向けの同梱物を送付しては、意味がないばかりか逆効果になってしまう可能性もあります。
例えば、すでに定期購入しているユーザーへの同梱物として、定期購入申し込みで初回割引などのチラシが入っていては意味がありませんし、仮に自分が定期購入を申し込んだ時よりも割引率が高い場合などは、ユーザーに悪い印象を与えてしまう可能性もあるため、注意が必要です。
ポイント② 同梱物を詰め込みすぎない
開封率が高いからといって、あれもこれもと同梱物を詰め込みすぎると、ユーザーにとっては押し付けがましく感じられ、かえって見てもらえる可能性が下がります。また量が多ければ多いほど、ネットショップ側の手間とコストも無駄にかかってしまうため、同梱物の詰め込み過ぎはユーザーにとってもネットショップ側にとってもあまりメリットはありません。
また、場合によっては詰め込みすぎた同梱物により、本来ユーザーが購入した商品が型崩れを起こしたり、傷が付いたりという可能性もあります。ユーザーにとっては、あくまで購入商品が主役であることを忘れてはいけません。同梱物は数点程度に抑え、過剰に詰め込みすぎないように注意しましょう。
ポイント③ 制作コストと封入作業コストの把握
購入商品に同封できるため、DMなどのように単体で送付するコストがかからない分、同梱物施策は低コストで無駄がないと考えられるかもしれませんが、同梱物の制作や封入工程にかかるコストには注意が必要です。
また、化粧品などのサンプル・試供品の作成にも少なからずコストがかかりますが、必ずしも成果が出るわけではありません。利益を削って同梱物施策を行うのですから、コストをかけすぎて逆に損をしてしまわないよう、同梱物にかかるコストを把握して、バランスを見ながら施策を行うことが重要です。
ポイント④ モールサイトにおいては規約を確認する
ショッピングモールサイトで販売する商品の同梱物には注意が必要です。
楽天市場では、現在は規制が緩和されましたが、以前はチラシなどの同梱物に自社サイトや他社モールに誘導するURLやQRコードを記載することが禁止されており、これに従わなかった場合、ランキングからの除外や検索順位が下がるなどのペナルティを受けてしまうといったことがありました。
このように、特に大手のモールサイトなどは、同梱物に関するガイドラインが定められている場合もありますので、事前に確認しておくことが必要です。
ポイント⑤ 必ず効果測定を行う
マーケティング施策は、実施したら必ず効果測定を行うことが鉄則です。同梱物のようなオフライン施策は、厳密に効果を測るのは難しい面もありますが、例えばアンケートによる顧客満足度調査や、同梱物の導入前後の販売データの比較、またクーポンを同梱して利用率を測るなどによって、効果測定を行いましょう。
費用対効果を念頭に置きながら、各同梱物の効果を確認し、適宜内容の見直しを行うことが重要です。
費用対効果を見ながら実施することが重要
ネットショップにおいて、同梱物施策はユーザーとの貴重な接点となり、LTVを向上させるための重要なマーケティング施策ですが、あくまで利益を削って行う施策であることを忘れてはいけません。そのため、一つ一つの目的を明確にして、費用対効果を検証しながら行うことが重要になってきます。
特に、ユーザーごとに同梱するコンテンツをセグメントする場合などは、封入工程なども複雑になりやすいため、余計なコストがかかって逆に利益を圧迫してしまわないよう、コストバランスを見ながら実施していくようにしましょう。そういった点に注意していけば、顧客満足度を最大化し、売上に大きく貢献する施策となるはずです。
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