EC担当者なら、有名ECサイトがどのような施策を打っているのか、押さえておきたいところでしょう。
ZOZOTOWNは、最先端のマーケティングを実施している企業の一つです。その企業やサイトの特徴を押さえることは、あなたのECサイトにも役に立ちます。
ZOZOTOWNは、2022年6月時点で1,500以上のショップ、90万点以上もの商品を掲載する(※)大型ECサイトです。国内アパレルEC業界では間違いなくトップを独走して市場を席巻している企業です。
※参考:株式会社ZOZO
ZOZOTOWNはアパレルEC業界をけん引する企業として、これまでさまざまな斬新な施策を打ち出し、業界内外の注目を浴びてきました。既存のEC事業者や、これからEC業界に新規参入する事業者の中には、ZOZOTOWNを運営の参考にしたいと考えている方も多いと思います。
ZOZOZTOWNが打ち出した施策の中には、短期間のうちに終了してしまったサービスも多くあり、またZOZOTOWNにしかできない再現性のない施策もありますが、EC事業者として大いに参考にするべき点もたくさんあります。
本日は、forUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、ZOZOTOWNの7つの特徴を紹介します。
ZOZOTOWNの7つの特徴
それでは、7つの特徴を順に解説します。
特徴①商品ボリュームとカテゴリの細分化によるSEO上位表示
冒頭に述べたように、ZOZOTOWNには常時90万点以上という数多くの商品が掲載されています。
商品はカテゴリを細かく分けた上で、性別や色、デザインなどでさらに細分化されております。商品点数の多さと細分化されたカテゴリは、そのままSEOの強さにつながっており、「スニーカー 白」「メンズ Tシャツ」などと検索すると、しっかり上位表示されています。
また、例えば「メンズ デニム」でSEO1位のZOZOTOWNのメンズデニムパンツの一覧ページを見ると、ページ下部に「関連ファッションまとめ」という形で、いくつかの記事ページが表示されます。これらはすべてデニムに関連したコラムになっており、こういった記事のリンクを設置することで、Googleから「メンズデニムのページ」と強く認識されて、SEOが強化されているものと思われます。
特徴②優れたUI
ブランドやセレクトショップなどのECサイトは、世界観を大事にしていることが多いので、特にアパレルにおいてはナビゲーションから英語を多用しています。対してZOZOTOWNを見ると、ほぼ全てのナビゲーションが日本語(カタカナ)で書くように徹底されています。
ブランド・セレクトショップでは、世界観という点で英語が使われているとやはりスタイリッシュに見えますし、そもそものユーザー層が限定的なので英語を多用しても問題はないと思いますが、ZOZOTOWNのようなモールの場合は、ユーザー層が幅広いためアクセシビリティに配慮する必要があります。誰にでも利用しやすいサイトであるために、英語の多用は避け、値段も大きく表示して見やすいインターフェースになっています。
サイドメニューを見ても、フォントサイズや行間、背景色とのコントラストなど「見やすさ」「分かりやすさ」を追求していることが分かります。また、商品ページの配色もシンプルで、基本的にテキストリンクや購入ボタンなどのリンク部分は水色で統一されており、ユーザーが直感的にリンクであることを見分けることができるため、どの商品においてもストレスなくカートインできるようなデザイン設計になっています。
特徴③クーポンやセールによる初回販促とリピート販促
ZOZOTOWNは割引セールやクーポン発行が非常に多く、クーポンについては期限が24時間で毎回内容が異なるクーポンが毎日発行されるなど、「いつ見ても何かの商品が安くなっている」という状態が作られています。ZOZOTOWNにはさまざまなクーポンやキャンペーンが用意されていますが、主なものは以下です。
・日替わりのショップクーポン
・シーズンセール
・不定期セール
・あなただけのタイムセール
※2022年9月時点
これらの多種多様な割引施策で、初めてサイトに訪れたユーザーからリピーターまで、いつどのタイミングでサイトを見に来たユーザーに対しても購入意欲を高めることに成功しています。
初回購入を逃さない「初回購入クーポン」
ECサイトにおいて一番重要なことは「初回購入」です。なぜなら、購入経験がなければその後もそのサイトで購入することはないからで、逆に言えば、初回購入をして、さらにその購入経験が素晴らしいものであれば、再購入の可能性が生まれ、LTV(顧客生涯価値)の向上が見込めます。
ZOZOTOWNは初回購入特典として、すべての商品に使える新規会員限定の2,000円OFFクーポンを発行しています。ZOZOTOWNの顧客層が若いことから考えると、2,000円割引は魅力的で、初回購入の期待値も高い内容です。
ここで初回購入が成功し新規会員となれば、ここからZOZOTOWNの真骨頂であるリピーター向けの施策でリピート購入を促していきます。
多くのクーポン&セールラッシュ
先ほど述べたように、ZOZOTOWNでは毎日クーポンが発行されます。この日替わりクーポンはZOZOTOWN内で一律利用できるものではなく、ショップごとのクーポンとなり、割引内容も異なります。内容が事前に知らされることはないので、お気に入りのショップのクーポンが発行され、それが24時間の期限付きとなれば、ユーザー心理的にはかなり購買意欲を刺激されます。
またZOZOTOWNでは、不定期でセールが開催されます。こちらも事前告知がないことが多いので、「サイトをのぞいてみたらセール価格になっていた」というサプライズ要素が強い割引販促です。
そして、ZOZOTOWNの割引施策でも特徴的なのが「あなただけのタイムセール」です。こちらも不定期のセールですが、ユーザーが「お気に入りに追加」した商品に適用されるセールになります。
「あなただけ」というネーミングもさることながら、通常はセールにならない商品が「お気に入り」という枠内でのみセールになるので、これもかなり購買意欲が高められる割引施策となります。
この施策の重要ポイントは、ユーザーは少しでも気になる商品があれば、どんどんお気に入りに追加していくことになりますので、ECサイト側としても「お気に入り商品の在庫がわずかです」とアプローチできるなど、顧客に対してさらなる販促がしやすくなるという点にもあります。
そして、これらのクーポンやセールだけでもお得なのですが、さらにタイミングが重なる場合があります。欲しかった商品にクーポンが発行され、さらにタイムセールも適用された場合、かなりの割引率になるため、購入される確率はぐんと高まります。実際に筆者もZOZOTOWNを利用していますが、このタイミングに遭遇した際は、ほぼ確実に購入しています。
ここまで来ると、ユーザーは「特別これが欲しい」というものがなくても、何度もサイトに足を運ぶようになり、これまで気にしていなかった商品を「ついで買い」してしまうなど、実店舗に近い行動を取るようになり、LTVの向上につながっていきます。
ただし、ユーザーが欲しい商品に対して、クーポン発行やセールがかかるまで買い控えをするようになるリスクもあるので、割引施策は慎重に行う必要があります。
特徴④バーチャル試着
ユーザーがアパレルECサイトで購入を検討する際に最もネックとなるのが、試着ができないことです。やはり実物を手に取って確かめたり、試着することができない分、購入にはかなり慎重になります。
そのため各社は、ECサイトで不安なく購入してもらうために、写真や仕様など情報の掲載に工夫を凝らしていますが、ZOZOTOWNはかなり先進的な方法をとっています。
ZOZOSUIT
ZOZOTOWNを利用したことがある方、あるいは利用したことがない方でも、何年か前にかなり話題になった「ZOZOSUIT」を覚えている方は多いと思います。
スマートフォンを使って全身のサイズを計測するサービスで、正確に体型を把握することができます。自分の身体の数値をかなり正確に知ることができるため、洋服選びも楽になり、また特定の商品をオーダーメイドできるということで、アパレルEC業界においてかなり革命的なサービスでした。
いくつか課題も残った「ZOZOSUIT」は2022年6月で旧型のサービスは終了したものの、今後は新型の「ZOZOSUIT2」が展開されていくようです。
ZOZOMAT
「ZOZOSUIT」同様に足のサイズを正確に計測できる「ZOZOMAT」は、自分に合うサイズをパーセンテージで提示してくれます。足の長さだけでなく、幅や甲の高さまでも3D的に計測してくれるので、革靴、ブーツ、スニーカーなどさまざまな種類の靴で相性の良いサイズを知ることができます。
ZOZOGLASS
「ZOZOGLASS」はメガネタイプの計測ツールで、肌の色を計測して自分のパーソナルカラーを診断できます。単に自分がブルーベースかイエローベースかという単純なものではなく、顔のパーツごとの色味を細かく計測してくれるので、女性の方はより自分に合ったベースメイクの色を知ることができます。
また男性であれば、自分にあったメガネの選択などにも一役買うツールです。
このようにZOZOTOWNは、ECサイトとしてはかなり先進的な形で「試着問題」に対応しています。とは言え、ユニクロの「MySize ASSIST」や、Amazonの「Prime Try Before You Buy」など大手をはじめとして、各社さまざまな方法でユーザーの不安解消に努めています。
ARによる試着も業界で注目され始めていますので、今後さらにサービスが進化していくのではないでしょうか。
特徴⑤「WEAR」によるUGCマーケティングの成功
ZOZOTOWNが運営するファッションコーディネートアプリ「WEAR」は、アパレルに特化したSNSアプリです。ユーザーは投稿されたコーディネート写真から、お気に入りの投稿者やアイテムを見つけ、欲しいアイテムがあれば、そこから直接ZOZOTOWNや提携ブランドのECサイトで購入することができます。リリース直後から話題になり、多くの芸能人も利用したことから、利用者の数を一気に伸ばしました。
WEAR内で人気のある投稿者は、WEAR公認のインフルエンサー「WEARISTA(ウェアリスタ)」として活動しており、ZOZOTOWNから年間100万円分を超える商品が提供されます。商品一点を取っても着こなしの幅が広く、さまざまな体型のウェアリスタが着用するため、商品ページ同等、あるいはそれ以上に多くの情報量を得ることができます。
ウェアリスタ自身もフォロワーの数が突出しており、目的も明確なので、着用商品には極めて効果的なプロモーションになっています。
ちなみに、ZOZOTOWNの取り扱い商品にはユーザーによるレビューがありません。これは、多くの企業が出店している中で、企業によってレビューの扱い方が異なるため、ZOZOTOWNとしてはその管理にかかるコストを避けるためと筆者は推測しますが、何よりWEARという確立されたUGC(ユーザー生成コンテンツ)があるからこそ、商品ページのレビューの必要性がないものと考えられます。
特徴⑥ZOZOBASEによる一貫した物流システム
ZOZOTOWNは物流システムを全て自社で構築・運営しています。国内最大級の自社物流センター(ZOZOBASE)で、在庫の保管から発送までを付帯業務含め一貫して行っております。つまり注文が入ってから商品のピックアップ、検品、梱包、発送までをZOZOBASE内で一気に行うため、最速の発送が可能になるのです。商品購入時の発送オプションで「即日発送」を選択できるのも、この物流システムがあってこそです。
◆「ZOZOBASEつくば3」(2023年8月稼働開始予定)へ導入予定の機器の一例
画像引用:ZOZO、2023年8月稼働開始予定の新たな物流拠点 「ZOZOBASEつくば3」で自動化を推進(株式会社ZOZO)
このZOZOTOWN独自の物流システムは出店者側のメリットも大きく、撮影や採寸などの「ささげ業務」もZOZOTOWN側に委託することで、入荷からサイト上で販売スタートするまでのリードタイムをかなり短縮することができます。また、ZOZOBASEと自社ECサイトを連携することで、自社ECの在庫とZOZOTOWNの在庫が一元化され、在庫ロスがなくなり業務効率化の実現が可能になります。
◆在庫連携イメージ
特徴⑦幅広い決済方法
ECサイトにおいては決済方法の選択肢の広さも、サイト利用率に強く影響します。
ZOZOTOWNの決済方法は以下の7つです。
・代金引換
・コンビニ払い
・ツケ払い
・PayPay決済
・LINE Pay
・GMO後払い
クレジットカード、代金引換、コンビニ払いは他社でも一般的に取り扱われている決済方法ですが、「ZOZOCARD」は、ZOZOTOWNでの買い物で5%、通常の買い物でも1%のZOZOポイントが還元されるZOZOTOWNに特化した決済方法で、ZOZOTOWN内での使用に限り、カードの申し込み直後から審査結果を待たずに使用できるユニークなクレジットカードです。
そしてもう一つの特殊な決済方法が「ツケ払い」です。これは注文日から2か月後まで支払い猶予がある決済方法で、商品の到着後に送付される請求メールで支払いを行います。いわゆる「後払い方式」ですが、クレジットカードのようにカードを作ったり銀行口座を用意する必要もなく、2か月以内であればいつでも好きなタイミングで支払えるので、クレジットカード決済より自由度が高い決済方法です。
最近では、Yahoo!ショッピングでも「ゆっくり払い」という名前で同様の決済方法が選択できるようになるなど、徐々に他社も採用し始めている決済方法ですが、購入代金を持ち合わせていなくても気軽に買い物ができてしまうため、利用する側の金銭管理能力によっては、リスクを含んだ決済方法であることに注意しておかなければなりません。
また、PayPay利用者がここ数年で一気に増加し、それを受けてZOZOTOWNでも「PayPay残高払い」が利用できるようになりました。クレジットカードとの併用ができるため、現時点での支払額(PayPay)と、未来の支払額(クレジットカード)を任意の金額に調整できるのは、ユーザーによっては大きなメリットを感じる決済方法でしょう。
このように、学生から社会人まで、多くの顧客層が購入しやすい、幅広い決済方法を用意しているのもZOZOTOWNの特徴です。
革新的な施策はZOZOTOWNだからこそ
この記事では7つの代表的な特徴を紹介しましたが、この他にも、ZOZOTOWNで購入した商品を下取りして、新しい商品を割引価格で買える「買い替え割」など、これまでのアパレルECサイト運営では考えられなかったような革新的な施策を次々と打ち出し、業界内外で常に注目されてきました。
しかし、年齢制限がないため未成年の滞納が多いことが問題視されたツケ払いや、出店企業の猛反発や撤退につながった常時割引のサブスクサービス「ARIGATOメンバーシップ」など、リスクを含んだ施策や、終了に追い込まれた施策も多くあります。
しかし、ZOZOTOWNがそういったリスクを予測できなかったはずはなく、むしろそれを承知の上で次々と斬新な施策を打ち出してきたことで、アパレルEC業界をけん引してきたことは間違いありません。こういったマーケティングが可能なのもアパレルEC業界大手のZOZOTOWNだからこそできることです。
既存のECサイト事業者や新規参入の事業者の多くにとって、ZOZOTOWNのマーケティングや販売戦略をまねしようと思ってもなかなか難しいところがありますが、ユニクロなども含め、アパレルEC事業として大手から学ぶべき点は多くあります。まずはサイトのUIから、ZOZOTOWNやユニクロなどの大手を参考に見直してみてはいかがでしょうか。
また、これからアパレルECサイトを構築する方は、インターファクトリーのebisumart zero(エビスマートゼロ)もご検討ください。アパレルECに必要な機能や、ツール連携が可能です。詳しくは下の公式サイトをご覧ください。