個人や小規模事業者がサイトを立ち上げるCMSとして、もっともなじみがあるのは、WordPress(ワードプレス)でしょう。そのためWordPressを利用して、ネットショップを開設したいと考えているかもしれませんが、それは非常に難しいと筆者は考えます。
たしかにWordPressを利用して比較的簡単にネットショップを作ることはできますが、やはり専門のカートシステムの方がより特化したサイトを簡単に作成できます。またネットショップ立ち上げ後の集客まで考えたとき、WordPressのネットショップ単体では集客が難しいからです。
しかし、カートシステムとWordPressの役割を分けてネットショップを構築することで、懸念を解消することができます。
本日はforUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、WordPressでネットショップを立ち上げる前に知っておくべきことを具体的に解説いたします。
WordPressでネットショップを開設するにはプラグインを使う
ブログを中心としたプラットフォームであるWordPressでネットショップを開設するには、ネットショップを開設するためのプラグインを利用することが必要です。日本国内で最も有名なプラグインはWelcartです。
ネットショップを開設するためのプラグインと書きましたが、ウェルカートにはネットショップとしての基本機能はひと通りそろっているので、WordPressで作ったサイトやブログをすでに所有している場合には、ウェルカートは「ネットショップ機能を追加するのに適したプラグイン」と言えます。
WordPressでネットショップを作る3つのメリット
メリット①WordPressはSEOの実績が豊富
まず、WordPressは、世界ナンバー1と言われるブログCMSです。2021年2月時点で世界のWebサイトにおけるシェアが40%を超え、下図を見ても分かる通り、他CMSに比べて圧倒的なシェアを獲得、今なお利用者を増やし続けています。世界で最もSEO実績の多いプラットフォームを使えることは、SEOにおいて大きなメリットです。
◆世界におけるCMSシェア推移
赤い線がWordPress、緑の線がCMS未導入、グラフ下部のその他の色の線が、その他のCMSになります。
実際に、筆者自身いくつものブログをWordPressで立ち上げましたが、多くのSEOキーワードで上位表示を実現し、アクセス数を増やすことに成功しました。
そのため、企業においてもブログ集客を実施する際は、ブログプラットフォームはSEO実績が豊富なWordPressを使うことがほとんどです。
メリット②費用がかからない
WordPressはオープンソースプログラムであり、無料でダウンロードしてサーバにインストールすることで誰でも利用することができます。一部有料のテーマ(デザインテンプレート)やプラグインを除けば、基本的には無料で永続的に利用することができます。
ただし、WordPressをインストールするサーバの費用やドメイン管理は、自社負担となります。
メリット③実現したいことを手軽に実装可能
WordPressのデザインをアパレルショップのようにおしゃれにしたり、あるいは法律事務所のように堅実な雰囲気を醸成するなど、WordPressは無料・有料のテーマが無数に公開されており、しかもボタン一つでカンタンにテンプレートを変更できます。
また、ネットショップをWordPressで作成するなど、特別な機能を持たせる場合も、プラグインをインストールしてカンタンな設定をするだけで良いので、エンジニアのような専門知識がなくても可能です。
WordPressでネットショップを作る3つのデメリット
メリットが多いWordPressですが、ネットショップを作る場合には、デメリットもあります。
デメリット①ネットショップの機能性は、専門のカートシステムの方が優れている
WordPressでプラグインを利用し、無料でネットショップを作ろうと考えている場合は、ネットショップ専門のカートシステムも固定費無料で利用できることも考慮した上で判断しましょう。
◆固定費無料のカートシステム
・STORES
・カラーミーショップ
これらのシステムはネットショップ専門に作られており、さらにクラウドのシステムのため、半永久的に機能拡張がされ続けます。使い方もWordPressを問題なく利用できる程度のITリテラシーがあれば、十分に使いこなすことができるほど、カンタンです。
WordPressでもネットショップに必要なさまざまな機能を手軽に実装できますが、専門のカートシステムはネットショップに特化しているだけあって、その手軽さと機能の多さはWordPressの比ではありません。下図はBASEの機能の一部ですが、これだけでもネットショップに特化した機能の充実ぶりがよく分かります。
◆BASEの機能一覧(一部)
参考:BASE(公式サイト)
もし、ゼロからネットショップを立ち上げるなら、これらの固定費無料のカートシステムを使うべきです。ただし、これらの固定費無料のカートシステムは、完全に無料というわけではなく、決済手数料がかかります。決済手数料については、固定費無料のカートシステムの場合はおおよそ5%前後です。
決済手数料については下記の記事をご覧ください。
ただし、これらのカートシステムを利用しただけでネットショップで商品が売れるわけではないので、集客に工夫が必要となります。
デメリット②セキュリティ面に不安がある
WordPressがセキュリティ面で不安がある理由は以下の3つです。
②WordPressやプラグインがバージョンアップされていないことが多い
③普及している分、ハッキングもされやすい
このような理由から、金融機関や大手事業者の中にはWordPressを導入しないという企業は多いです。そして筆者のクライアントでWordPressがハッキングされた場面を3回も目撃したことがあります。それだけWordPressはセキュリティ面に不安があると言えます。
最近でも、女性向けファッション事業を手掛ける企業のWebサイトや官公庁管轄のWebサイトが不正アクセスや改ざん被害を受けるなど、WordPressの脆弱性に起因する被害報告が出ています。
WordPressはブログ機能が中心であるため、ブログであれば仮にハッキングされても大きな被害はありませんが、もしネットショップがハッキングされた際に決済情報や個人情報が流失してしまうと、事業として致命的なダメージとなってしまいます。
このような点からもネットショップを作る場合にはWordPressはあまりおススメできないのです。
デメリット③WordPressはあくまでブログツール
WordPressの主軸はあくまでもブログツールとしてのCMSですので、ネットショッププラグインも機能の一つに過ぎません。なので、前述したように、ネットショップとしての使いやすさやUIの優位性は、どうしてもネットショップに特化した専門のカートシステムに軍配が上がります。
ですから、筆者はやはりネットショップの立ち上げ・運営には、WordPressにしろ専門カートシステムにしろ、各々の特性を最大限に生かした運用をすることが最善であると考えます。
なぜなら、ネットショップはサイトを作って終わりではなく、そこからの集客を見据えた運用まで考えなければいけないからです。
では具体的にどうすれば良いか、次に説明します。
WordPressと専門カートシステムは役割を分けるべき!
WordPressは、SEOの優位性からブログによる集客のメリットがあり、専門カートシステムは、ネットショップに特化した機能があることがメリットです。ですから、筆者がおススメするのは、無理にWordPressでネットショップを開設するのではなく、役割を分けることです。
◆役割分担
ネットショップ (カートシステム)<==CVR(購入率)の追求
図にすると以下のようになります。
つまり、WordPressで集客用のブログを作成し、ネットショップに送客(誘導)するという仕組みを作ることが、集客まで見据えた最良のネットショップの構築モデルとなります。
ネットショップの目的はあくまでCVの追求
ネットショップの失敗例としてよくあるのが、集客のためにSEO順位を上げようとして、商品ページに長文で商品説明やアピールポイントを書いてしまうことです。商品説明が長くなると、大抵は購入ボタンがかなり下の方になってしまうため、CVR(購入率)が下がる要因になってしまうのです。
やはり商品ページは、CVRの追求のために購入のしやすさを第一に考え、商品画像の見やすさや、ひと目でわかりやすいボタン位置などを念頭に置いて、簡潔に作るべきです。
しかし、そうすると商品の説明やアピールポイントが伝えきれなくなってしまうのでは?と懸念される方もいるかと思います。そこでWordPressの出番となるのです。
WordPressのブログは優秀な集客ツール
冒頭でも述べた通り、WordPressは世界シェアナンバー1のブログCMSで、SEOにも非常に有力なツールです。そのSEO優位性を利用して集客用ブログを作り、そこで存分に商品の説明やアピールをした上でネットショップの商品ページに送客(誘導)することで、ネットショップだけでは難しい、集客部分をカバーすることができます。
まとめ
WordPressは、ネットショップのプラグインも優秀で簡単にネットショップを作ることが可能です。しかしながら、やはり機能面や管理面では、専門のカートシステムの方が優れています。
そこで、ネットショップは専門のカートシステムで構築してCVRを追求し、集客はSEOに有利なWordPressでブログ集客を実施するといった形で、WordPressとカートシステムそれぞれの役割を分担してネットショップを構築することで、各々の長所を生かし短所を補いながら、最も効率の良いネットショップの構築と運用が可能になります。