ECサイトの中でも、多くの事業者から手本とされるのは、ユニクロのECサイトではないでしょうか?
2022年5月時点で、国内812店舗、海外主要都市に1,560店舗を展開するユニクロ。そのユニクロを事業の中核とする株式会社ファーストリテイリングは、いまやアパレル業界では世界トップ3に入る企業に成長しました。
それは商品の品質はもちろんのこと、極めて高い企画力や開発力、マーケティング力によるものですが、その中で自社ECサイトの運営力も大きな要因となっております。それは15.1%という高いEC化率(国内事業:2021年8月期)にも表れています。
このECサイトの利用率の高さは、ユニクロECサイトの優れたUIに加えて、オムニチャネル施策による実店舗との連携の成功にあると筆者は考えます。
筆者も、いちユーザーとしてユニクロのECサイトを利用していますが、サイトやサービスをじっくり見ていくと、いかに高いレベルでのユーザー体験が実現されているかが分かってきます。
本日は、forUSERS株式会社でマーケティングを実施している筆者が、ユニクロのECサイトの7つの特徴を解説いたします。
ユニクロのECサイトの7つの特徴
それでは7つの特徴を順に解説します。
特徴①ECと店舗の連携
売上上位のアパレル企業の多くは、実店舗とECサイトの連携を行うオムニチャネル施策に力を入れておりますが、特にユニクロは早い段階でオムニチャネル化を取り入れており、店舗とECの効果的な連携に成功しています。
以下は、ユニクロの代表的な施策です。
連携①商品ページから実店舗の在庫状況を確認
ECサイトで気になる商品を見つけたら、実店舗の在庫の有無を確認できます。人気商品は完売になることもよくあるので、「欲しいアイテムを店舗に買いに行ったが売り切れていた」ということがなくなり、逆に在庫がある店舗を探し出すこともできるようになります。
◆在庫確認画面
特にユニクロのECサイトは、少し前の在庫状況が反映されていますので、かなりリアルタイムに近い情報になっています。
連携②ECサイトでの購入品を店舗で受け取れる
ECサイトで購入した商品は、指定した店舗で受け取ることができます。ECサイトの送料は500円で、購入代金合計4,990円以上で送料無料になりますが、店舗受け取りであれば、金額にかかわらず送料が無料になります。ECサイト利用の際に、送料はネックになりやすいので、店舗受け取りを利用するユーザーは多く、ついで買いも期待できるサービスです。
連携③ORDER & PICK
店舗にある在庫をECサイトで購入できるサービスです。在庫は店舗在庫なので、ECサイトで在庫切れになっている商品も、店舗に在庫がある場合、サイト上で購入することが可能です。購入後、商品は店頭にて受け取る形になります。ただし、前述の通り在庫状況は「少し前」の情報ですので、購入後に在庫がないことが確認された場合は、キャンセルになる可能性があります。
◆ORDER & PICKの画面
なお、返品はオンライン倉庫に返送する必要がありますが、交換については、商品があればその場で交換することも可能です。
連携④バーコードスキャンで商品ページへ
こちらはアプリの機能になりますが、店舗で商品のバーコードをスキャンすると、ECサイトの該当商品ページに遷移します。実際の商品を手に取りながら、商品のレビューや着用例などを確認できますし、レビューは投稿者の「性別」と、大体の「年齢」「身長」「体重」が記載されているため、大変購入の参考になります。
これらの施策により、店舗とECサイトがシームレスに連携することで、ユーザーの購入機会の最大化が図られています。
特徴②サイズ感が把握しやすい
ECサイトでアパレル用品を購入する際に、ユーザーが最も気にするのが「サイズ感」です。ユニクロではユーザーに最適なサイズを提案してくれる「MySize ASSIST」という機能があります。身長、体重、年齢、体型、さらには好みの着用感(ぴったり or ゆったり)を入力することで、自身に合うサイズをパーセンテージで示してくれます。
◆MySize ASSISTの画面
サイズチャートも非常にユーザーフレンドリーな作りになっており、詳細な採寸表に加えて、商品の採寸の方法から身体の採寸の方法まで詳しく記載されています。ECサイトを利用したユーザーにとって一番避けたい「購入後にサイズが合わない」という体験をできるだけさせないように、という姿勢が感じられます。
◆商品サイズ一覧表
特徴③UNIQLO IQ
ユニクロオンラインショップでは、商品の在庫確認や返品・交換対応、またスタイリング例の確認などさまざまなことができますが、実際の操作としては、該当するメニューやボタンからそれぞれのページに移動して一覧から探すなど、利用者の中には「分かりづらい」「面倒」と感じる人もいるかもしれません。
店舗であれば、それらのことは店舗スタッフにまとめて聞くことができるので、すぐに求める回答が得られます。それをオンライン上で実現させたのが「UNIQLO IQ」です。
UNIQLO IQはいわゆる「チャットボット」で、AIによる自動回答でチャット方式で質問や相談ができる仕組みです。AIで問題が解決しない場合は、そのままオペレーターと直接チャットでやり取りが可能です。
◆チャット画面
チャットによる顧客対応はNIKEアプリなどでも取り入れており、筆者も以前に使ったことがありますが、チャットなら電話よりも手軽で、メールよりもレスポンスが早いため、非常に便利だと感じました。大手企業の大規模リソースならではのサービスと言えます。
特徴④ECのみのバリュー
ECサイトをより利用してもらうために、ECサイト限定の付加価値を持たせており、例えば商品のサイズにおいて、XSやXXL、3XLなどのエクストラサイズはECサイト限定の展開になっております。また、商品そのものがECサイトでしか購入できない「オンライン特別商品」もあります。
◆オンライン特別商品
また、ユニクロの割引クーポンには、ECサイト専用のクーポンもあるので、これもECサイトの利用促進につながっています。
特徴⑤商品ページの情報量
ユニクロのECサイトの商品ページは、業界でも非常に評価が高いUIです。シンプルで使いやすく設計された商品ページは、その情報量の多さも特徴です。
ユニクロの商品ページの写真は、基本的には着用写真が大部分を占めています。アイテムによっては商品単体写真はなく着用写真のみというものもあり、写真点数も多く、着用動画も用意するなど、ユニクロが「着用した実際のイメージ」を大事にしていることが分かります。
またスタイリング例の写真も、ユニクロ公式のスタイリングからスタッフや購入者の投稿によるスタイリング写真も豊富に用意されており、ユーザーが普段自分が着ている服のイメージに落とし込みやすくなっています。
◆スタイリングの写真を掲載
商品レビューは、ただの個人の感想にならないよう、投稿者が購入したサイズや着用感から、身長、体重などの情報も記載されているので、そこからも実際の着用イメージがつかめるように工夫されています。
◆商品レビュー
特徴⑥他商品へのクロスセルの仕組み
前述したスタイリング例の写真では、コーディネートを組んだ各商品ページに遷移できるようになっています。また、「一緒に見られている商品」や「一緒に購入されている商品」も掲載するなど、クロスセルの導線がしっかり作られています。
特にスタイリングからのクロスセルは、もともとシャツを購入する予定だったユーザーが「このパンツとの合わせが素敵だから、これも一緒に買おう」と、パンツの商品ページに遷移し、さらに「このパンツにはこのシューズも合うな」と、シューズの商品ページ遷移するといった具合に、クロスセルの連鎖が起きやすく、豊富な商品点数を誇るユニクロならではの仕組みと言えます。
◆着用アイテムを紹介した画面
特徴⑦SNS連携で拡散しやすい仕組み
ユニクロとジーユーが共同で開発した「StyleHint」というアプリがあります。ユニクロとジーユー専門のファッションSNSアプリとも言えるツールで、投稿されたコーディネート画像からダイレクトにユニクロの商品ページに遷移し、購入することができます。
◆StyleHintの画面
また、自分が持っている洋服や雑誌などに載っている洋服の写真(ユニクロの商品でなくてもよい)から、インフルエンサーが提案するおすすめのコーディネートや、ユニクロの商品の中から近いアイテムを検索することができます。気に入ったコーディネートや商品があれば、それをオンラインですぐに購入できるようになっています。
ユニクロは自社のマーケティングだけに頼らず、ファッションインフルエンサーによるInstagramやYouTubeのマーケティングにも力を入れています。
参考:StyleHint
今後のEC業界はオムニチャネル施策が成功の鍵
本記事ではユニクロECサイトの代表的な特徴を述べましたが、やはり特筆すべきなのは、ECサイトが単なるショッピングサイトではなく、実店舗との多角的な連携により売上を最大化させていることと言えます。
アパレル業界で言えば、ユニクロをベンチマークとして今後、よりオムニチャネル化が進み、リアルとオンラインの連携による顧客体験の向上を追求していく流れになるでしょう。
ECサイトは、店舗へ行かなくても、どこでも思いついたときに買い物ができる最高のショッピングツールですが、それでもあえて実店舗を利用するのは、やはりECサイトにおいては「実物を見ていないものを購入するのが不安」というのが大きな理由のひとつです。
◆インターネットで商品を購入しない理由
そのため、可能な限り商品ページの情報濃度を高め、在庫連携、購入品の店舗受け取りや無料サイズ補正(※)などの実店舗との連携、そしてECサイトだけの付加価値により、その不安をどれだけ埋められるかが成功の鍵になってくるでしょう。
※一部対象外商品を除く
もし、この記事を見てアパレルECを立ち上げるという方がいれば、インターファクトリーのebisumart zero(エビスマートゼロ)をご検討ください。特に新規事業でアパレルECを立ち上げる際に、多くの機能が実装されており、アパレルECに必要なツールとも連携可能です。詳しくは下記の公式サイトをご覧ください。