化粧品EC業界を解説!業界で使われるマーケティング戦略とは?

化粧品業界は、決してEC化率が高いとは言えず、経済産業省のデータによると「化粧品・医薬品」の2021年のEC化率は7.52%しかありません。コロナ禍でも他のジャンルと比べて、そこまでEC化率は伸びませんでした。その理由は以下だと筆者は考えます。

・ドラッグストアなどの店舗が多く、利便性が高い
・若い女性にはプチプラの化粧品が人気
・スタッフから接客を受けたい需要がある

このような理由から、化粧品業界はもともとEC利用がそれほど多くない業界です。しかし、こういった背景の中で、業界各社はECでの売上を上げるため、さまざまなWebマーケティング施策を始めています。

本日は、forUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、化粧品ECについて、詳しく解説します。

化粧品EC(医薬品を含む)のEC化率は7.52%

まずは以下をご覧ください。

化粧品ECのEC化率

EC市場規模(億) EC化率
2014年 4,415 4.18%
2015年 4,699 4.48%
2016年 5,268 5.02%
2017年 5,670 5.27%
2018年 6,136 5.80%
2019年 6,611 6.00%
2020年 7,787 6.72%
2021年 8,552 7.52%

引用:経済産業省令和3年度電子商取引に関する市場調査報告書」(2022年8月発表)、「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)報告書」(2021年7月発表)より筆者作成

コロナ禍に突入し、2020年から2021年にかけては化粧品・医薬品業界のEC化率が飛躍的に伸びました。コロナ禍においては、マスクの着用や、外出を控えることにより化粧をする機会が減ったにもかかわらず、EC化率が伸びています

経済産業省のデータには、医薬品も含まれているので、コロナ禍において「風邪薬」や「マスク」などの購入でEC利用が進んだことが大きな要因だと思われますが、今までよりも化粧品をECで購入する層が増えてきたのではないかと筆者は推測します。

2021年の日本国内のBtoC-EC全体のEC化率は8.78%ですから、7.52%の化粧品(医薬品を含む)業界のEC化率は、家具や家電、アパレル業界よりもEC化率が低い業界です。化粧品業界のEC化率が伸びない原因は以下の3つだと考えます。

理由①ドラッグストアなどの店舗が多く、利便性が高い
理由②若い女性にはプチプラの化粧品が人気
理由③スタッフから接客を受けたい需要がある

理由①ドラッグストアなどの店舗が多く、利便性が高い

コロナ禍においても、ドラッグストアの需要は非常に高まりました。以下をご覧ください。

◆2021年のドラッグストア実態調査(速報版)

全国総売上高は8兆5408億円(対前年6.3%増)
2万1725店舗(対前年441店舗増)

データ引用:【JACDS】Dgs総売上高は8.5兆円‐21年度、店舗数2万2000店に迫る(薬事日報ウェブサイト)

このように、売上と店舗数を増やしており、店舗が増えるほど、全国のユーザーは化粧品が手に入りやすくなりますので、ECサイトを利用する必要性が少なくなります。さらにドラッグストアには医薬品だけでなく日用品も充実しており、ドラッグストアを日常的に利用する方が多いため、利便性も高いのです。

理由②若い女性にはプチプラの化粧品が人気

また、プチプラコスメ(プチプライス・コスメの略)と呼ばれる安価な化粧品が若い女性には人気です。このような商品は非常に単価が安いため、ECサイトで販売しようとすると、送料がかかりますし、利益もあまり出ません。そのためドラッグストアなどの店舗での販売がメインとなります。このような背景も化粧品ECの利用が進まない理由の一つと言えます。

以下は「ファンくる」を運営する株式会社 ROIの調査データですが、実際のデータを見ても調査対象の全世代において、プチプラコスメはドラッグストアでの購入が最も多いことが分かります。

◆プチプラコスメの購入先についての調査結果

プチプラコスメ購入先

データ引用:プチプラコスメについての意識調査(株式会社ROI調べ)

筆者の友人の女性数人(いずれも20代)に聞いたところ、プチプラコスメの買い物はイベントのようなもので、店舗で友人たちとコスメを選ぶこと自体が楽しいので、ドラッグストアに通っているそうです。若い女性の中には、店舗に行くことが目的であり、あえてECサイトを利用しないという層も少なからず存在するようです。

理由③スタッフから接客を受けたい需要がある

ある程度の値段のする化粧品であれば、購入後に

「このファンデーションはイメージと違う!」
「使用感が悪く、肌に合わない!」

といった失敗は避けたいところでしょう。そのため、特に高級な化粧品においては、スタッフから接客を受けて、実際に試してみるのが一般的です。つまり、化粧品は「お試し」が必要な商品であるとも言えるでしょう。

このことが、化粧品がECで購入されにくい要因の一つではありますが、通販メーカーでは、試供品を送るなどしてECを含めた通販利用者を広げております。DHCでは、以下のように無料サンプルの一覧ページなども用意することで積極的にお試し利用を促進し、その後の商品購入につなげる施策を行っています。

◆DHCのECサイト

DHC無料サンプル一覧

参考:化粧品無料サンプルサービス サンプル一覧(化粧品のDHC)

試供品の用意にはコストがかかるため、販促費と考えて、1つの試供品で購入に至るCVRや定期購入のLTVなどのKPIを定義して、それらを向上させる施策が必要となります。また、化粧品業界は化粧品メーカーから通販専門会社まで、競合が非常に多い業界ですから、商品力や企画力が問われるのです。

化粧品ECで売上を伸ばすための3つのWebマーケティング戦略

それでは、化粧品EC業界において、EC化率を上げて売上を伸ばすにはどのようなマーケティング戦略があるのか、ここでは以下の3つを紹介します。

①インフルエンサーマーケティング

Instagramでフォロワー数の多いインフルエンサーに商品を紹介してもらう方法です。インフルエンサーへの報酬は、基本的にフォロワー数に応じて金額が変わるケースが多く、人気のインフルエンサーとなると安くはありませんが、その分絶大な効果が期待できます。ただし、インフルエンサーといっても、フォロワー数が多ければ誰でも良いわけではなく、自社のターゲット層やブランドの世界観と相性の良いインフルエンサーを選びましょう。

インフルエンサーに依頼するには、キャスティング会社に問い合わせるのが一般的ですが、InstagramではDMで直接依頼することができますし、「お仕事の依頼はこちらから」といった問い合わせ先を用意していることが多いので、直接依頼できれば、キャスティング会社に払う仲介料が不要となります。

ただし、告知タイミングが重要な商品などの場合は、マネジメントをしっかり行う必要があります。また、仮にインフルエンサーによる宣伝で売上を伸ばすことができても、同じインフルエンサーで同じ宣伝を繰り返すと、フォロワーに飽きられてしまいますし、宣伝色も強くなってしまい、思うように売上が上がらなくなるので、インフルエンサーマーケティングの効果は一時的なものと考えるべきです。

次に紹介するサブスクリプションによるLTV向上など、他のマーケティング戦略と絡めることで、一時的ではなく、恒久的に売上を伸ばす施策になるでしょう。

また、宣伝してもらう際は「PR」などの文言を入れておかないと、ステルスマーケティングとなりますので、ご注意ください。

 

②定期購入やサブスクリプションモデルの導入

ECサイトにおいては、定期的に商品を購入するリピーターが最も売上を安定させます。つまり、化粧品を単発で買ってもらうのではなく、定期購入やサブスクリプションモデルに誘導して、LTVを向上させる施策であり、化粧品やサプリメント、青汁などの健康食品によく利用されるWebマーケティング戦略です。

そのために、LP(ランディングページ)では、フォームで無料試供品のための個人情報入力の際に定期購入を促したり、あるいは、試供品を申し込んだユーザーに、同梱物やステップメールにより、定期購入を促す方法が一般的です。

定期購入後も、事業者は解約率などのKPIを定義して、解約を防止する施策を行う必要があります。しかし、あまりに解約しにくいフォームや仕組みにしてしまうと、ユーザーが不満に思い、SNSで炎上する可能性もあるので、あくまで満足度を上げて解約率を減らす方向で試してみましょう。

③バーチャルメイクの導入

以下の記事によると、資生堂やAmazonが利用することで、飛躍的にCVRを高めているのがバーチャルメイクです。

参考記事;「バーチャルメイク」の導入で、コスメのCVR2倍以上、売り上げ8倍!? 化粧品EC、小売店の活用事例(ネットショップ担当者フォーラム)

AIやAR(拡張現実)技術を使うことで、カメラに映った自分の顔を、実際にメイクをしているかのように見せる技術です。化粧品ECの弱点は、商品を試すことができない点でしたが、バーチャルメイクによりこれが解消されるため、バーチャルメイクを導入できれば多くのECサイト利用者を増やすことにつながります。

ただし、このようなバーチャルメイクは開発・管理コストも大きく、導入できる会社は資生堂やAmazonといった大手に限られるため、このようなサービスがパッケージ化されて、多くの事業者が試せる環境にならないと、業界全体としてのEC化率が劇的に伸びることはないでしょう。

◆資生堂のバーチャルメイク「ワタシプラス」

資生堂ワタシプラス

参考:バーチャルメイク | ワタシプラス – 資生堂

まとめ

コロナ禍によるテレワークやマスク着用の影響により下降した化粧需要は、そろそろ回復に向かうのではないかと筆者は考えます。一方で、コロナ禍でECサイトやオンラインサービスの利用者が確実に増えたため、化粧品業界においては、店舗の利用とともにECの利用を増やしていくことが、売上を伸ばすためのポイントの一つとなるはずです。

化粧品業界においてECサイト構築を考えている事業者の方は、インターファクトリーのebisumart zero(エビスマート ゼロ)をご検討ください。メーカーのECサイトから商品ごとのLPまで、イメージや用途に合わせて自由にカスタマイズができるプラットフォームです。化粧品や健康食品の販売に有用な「定期販売」や「頒布会」といった販売手法にも対応していますので、詳しくはぜひ以下の公式ホームページをご覧ください。

ebisumart zero公式ホームページ