家電製品は、型番が分かればどこの店舗やECサイトで購入しても、商品のクオリティの差がほとんどないことから、ECサイトの利用が進み、家電業界のEC化率は38%と非常に高くなっています。
家電EC各社は、Amazonなどの大手ショッピングモールや競合各社と激しいシェア争いを行っています。そのため家電EC業界の動向をつかむには、ビックカメラやヨドバシカメラなどの大手の動向をつかむのが一番です。
なぜなら、大手各社はOMO施策や、Web接客に力を入れるなど、ECにおいて最新の施策を実施しているからです。
本日は、forUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、家電EC業界について解説します。
家電ECの市場規模は2兆4584億円でEC化率は38%
まず、家電EC業界のEC化率と市場規模を紹介します。
EC市場規模(億円) | EC化率 | |
---|---|---|
2014年 | 12,706 | 24.13% |
2015年 | 13,103 | 28.34% |
2016年 | 14,278 | 29.93% |
2017年 | 15,332 | 30.18% |
2018年 | 16,467 | 32.28% |
2019年 | 18,239 | 32.75% |
2020年 | 23,489 | 37.45% |
2021年 | 24,584 | 38.13% |
引用:経済産業省「令和3年度電子商取引に関する市場調査報告書」(2022年8月発表)、「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)報告書」(2021年7月発表)より筆者作成
もともと、家電EC業界のEC化率は非常に高い水準で推移していましたが、2020年にはコロナ禍により、さらに伸びました。ここまでEC化率が伸びた理由は、コロナ禍以前から大手家電ECサイトのUI改善が重ねられていたことと、物流網の整備が進んでいたこと、そしてコロナ禍でさらにEC利用率が上がったことによります。
家電EC業界の5つのポイント
家電EC業界を把握するには、ビックカメラやヨドバシカメラ、ヤマダデンキなどの大手の最新動向を知ることが一番でしょう。そこで、筆者が家電EC業界の最新の動向を踏まえながら5つのポイントを解説します。
ポイント① 実店舗とECサイトの連携・融合
ビックカメラは、DXを進めるための新会社「株式会社ビックデジタルファーム」を2022年9月15日に設立しました。この会社は店舗とECのシームレスな結合を実現するためのOMO戦略を推進することが目的で設立されました。
OMOとはOnline Merges with Offlineの略で、オンラインとオフラインの融合のことです。
ビックカメラがOMOを推進する背景には、Amazonの存在があります。EC業界においてAmazonは国内でも圧倒的なシェアがあります。そのため、家電大手もAmazonとの差別化を図るために、店舗を持つ強みを生かして利便性を高める施策を打ち出しています。
例えば、実店舗とECのポイント連携ですが、大手家電各社はAmazonにはない高還元率を設定し、自社ECでの購入を促しています。また、スマホアプリを使ったチラシやクーポン施策、さらにECサイトからの商品取り置きなど、Webから実店舗への送客施策を行っています。
◆ビックカメラの「ネット取り置きサービス」
このように、店舗を持つ家電業界においてOMOは欠かせない施策となるのです。
ポイント② SEO対策
Googleで「テレビ 32型」と検索すると、以下のような会社が検索結果上位となっています。
◆Googleで「テレビ 32型」と検索したSEO順位
◆SEO順位
SEO2位 価格.com
SEO3位 価格.com
SEO4位 ビックカメラ
楽天市場、価格.comとともに家電大手のビックカメラもSEO上位に表示されています。このように検索ボリュームの多いキーワードでSEO順位を争うことができるのは、以下のようなSEO対策の結果となります。
◆大手家電メーカーがSEOに強い理由
② 商品ラインナップが豊富である
③ ブログ記事がある
比較サイトの価格.comや、楽天市場、Amazonなどのショッピングモール型サイトを使えば、価格が最も安い商品を探すのは簡単ですが、それに対して、家電大手のECサイトでは、アフターサービスなどのサポート面や詳細な商品情報の掲載による安心感を演出することで差別化を図っています。
◆ビックカメラのアフターサービス
SEOからの流入も、1日に数千以上のアクセスがあるため、SEO順位が売上に非常に大きな影響を及ぼします。SEOが強い楽天市場に出店する場合、出店料がかかるため、やはり自社ECサイトで購入されるのが理想であり、SEO対策は非常に重要と言えます。
ポイント③ 店舗での接客力をECサイトでも生かすためのWeb接客
家電量販店の強みは、何と言っても商品知識の豊富な専門スタッフの存在です。来店客のニーズを聞き取り、最適な商品を勧めてくれます。しかし、家電ECサイトでは、そのような専門スタッフの商品知識を生かしにくい面があります。
そこで家電ECでは、以下のような取り組みをすることで、ECサイト上のWeb接客の強化に乗り出しています。
・商品ページの作り込み
・ライブコマース
◆エアコンの専用LPページの設置(ビックカメラ)
◆商品ページの作り込み(ヨドバシカメラ)
画像引用:ヨドバシ.com
◆ライブコマース(ヤマダデンキ)
ライブコマースでは、チャットによる質問ができるため、他のLP施策や商品ページの作り込みとは違い双方向のコミュニケーションができるのが魅力です。このような取り組みを強化することで、家電各社は、Web接客の強化に取り組んでいるのです。
ポイント④ 迅速・丁寧な配送
Amazonの「Amazonプライム」というサービスでは、対象地域に限り最短で当日配送を実現し、Amazonの利便性はますます高くなってきています。しかし、ヨドバシ.comでも「ヨドバシエクストリーム」というサービスを実施しています。
画像引用:ヨドバシエクストリーム
ヨドバシエクストリームの特長は、注文から最短30分での配送という速さです。また、配達員はヨドバシカメラの契約社員であり、荷物を渡す際も「ヨドバシカメラです、この度はお買い上げありがとうございます」と荷物の配送ではなく、商品のお届けという意識をもって配送しております。
このような取り組みの中で、ユーザーからの要望を受けて、家電以外にも日用品などの取り扱いも増えています。このような配送スピードと配送クオリティは、自社で物流網から配送スタッフまでを持つヨドバシカメラだからこそできる取り組みです。
なぜ配送料を無料にできるのか疑問に思うところですが、以下の記事によると、荷物というのは保管するのにコストがかかります。しかし、商品をいち早く配送することで、保管コストを下げることができるので、その観点で考えると、早く配送することがコストを削減することに結び付いているのです。
ポイント⑤ 楽天市場に出店!マルチチャネル施策
いくら、自社ECサイトに力を注いでも、そもそも「楽天市場でしか商品を買わない!」というユーザーは相当数おります。そのため、
・ヤマダデンキ
・上新電機
などは、楽天市場にも出店しております。大手家電としては、楽天市場への出店料及び、運営負担、在庫等のシステム連携など、自社ECサイトよりもコストがかかりますが、より多くの新規顧客を得るには、マルチチャネル施策は有効です。
また、ヤマダデンキはAmazonにも出品しており、マルチチャネル施策を幅広く展開しております。
まとめ
家電ECは、例えば食品ECなどと比べると、EC化率は非常に高い分野です。コロナ禍においても2020年は、EC化率が伸びました。しかし、2021年になるとEC化率はそこまで伸びなかったことを考えると、すでにEC化率が安定的に高い分野であり、今後、EC化率が急激に上がることもないと筆者は予想します。
今後も、家電業界のユーザーの囲い込み施策や、シェア争いはますます激しくなります。商品自体に差をつけることができない以上、家電各社が勝ち残っていくためには、ライブコマースや翌日配送などのあらゆる施策を実行し、「ここで買いたい!」というようにユーザーの高い支持を得るために新しい取り組みを続けていくことが重要なのではないでしょうか。
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